小型機なのでスピードはシルバーホーク0式の方があり、アヴァロンに追いつくのは簡単だった。だが戦艦からの魔法攻撃は激しく、取り付くのは難しい。機銃のような武装から飛んでくるのは無属性のエネルギー弾だ。弾幕が厚い、これじゃあ近づけないぞ。

 不意に後部座席のメリッサが立ち上がった。

「何をするんだ、メリッサ? 危ないぞ」

 エネルギー弾は機体をかすめて飛んでいる。当たればタダでは済まないはずだ。だがメリッサは無言のままに氷狼の剣を抜き、精霊狼を二体召喚した。精霊狼は銀の尾を引きながら砂漠の空を走っていく。彼らの軌跡に靄が立ち上がった。

「そういうことか!」

 精霊狼の作る靄が煙幕のように広がっていく。シルバーホーク0式はその中を飛び、翼に損傷を受けながらもアヴァロンの甲板に不時着した。ほとんど追突といっていい着地だった。

「いたたたた……。みんなケガはない?」

「けっこう重症だよ」

 肩を押さえたリタが答える。

「アタシも脚が……」

 ララベルのパンツには血が滲んでいた。

「腰が、腰がぁ……」

 シドもか……。僕は大急ぎで皆を「修理」で治療した。

「とんでもねえ無茶をしやがって。まあ、治ったからいいけどよお……」

 シドが腰をさすりながらブツクサ言っている。

「ほんとに、セラじゃなきゃ完全な自殺行為だよね」

「ごめんよ、リタ。もう痛くない?」

 さて、どこから内部に入ろうかと考えていたら、敵が向こうから現れた。

「いよぉ、セラ・ノキア。こんなところまでご苦労なこった。せっかく来たんだ、歓迎してやるぜ」

 人を馬鹿にしたような態度のオーケンが、部下を従えて現れた。カジンダスは素早く動いて僕らを半包囲する。五十対七だから完全に優位に立っているつもりだな。だけど、砂漠の鷹は一筋縄じゃいかないんだぞ。

「エリシモさんを返してもらおうか」

「そうはいかねえ、あの女にはまだ用があるんだ」

「彼女をどこにやった?」

「心配するな、丁重に扱っているさ」

 どこかで見張られているのだろう。これ以上の問答は時間の無駄だな。

「カジンダスの武器には毒が塗ってあるぜ。それから、あいつらは全員暗器を使うから気を付けろよ」

 シドの忠告にオーケンが目をむいた。

「詳しいな。お前何者だ?」

「別に大したもんじゃねえ。通りすがりのイケオジさっ!」

 シドのガントレットからボルトが連射され、それが開戦の合図となった。

 接近戦を仕掛けてくると思いきや、奴らは全員で小さなナイフを投げてきた。さすがは特殊部隊だけあって戦い方も尋常じゃない。しかも集団戦に長けている。次々と飛来するナイフには毒が塗ってあるようだ。初手は完全に奴らが優勢だった。