砂の上を全速力で走ったので他のメンバーとの距離がだいぶ空いてしまった。唯一の例外はメリッサだけだ。彼女だけは僕の脚力についてきている。

「どうする気?」

「シルバーホーク0式で追いかける」

 試運転もまだの機体だけど、もうそれしか方法がない。

「ついにアレが飛ぶのね」

「だけど、ひょっとしたら空中でバラバラになってしまうかもしれないんだ。特に無理な飛行をすれば……」

 戦艦からの攻撃だって考えられる。急旋回なんてしたらどうなるかはわからない。できることならメリッサには乗ってほしくないというのが本音だ。

「それでもいい、セラと一緒なら怖くない」

「メリッサ……」

「あいつを落っことしに行こう」

 メリッサは僕をピクニックに誘うみたいにそう言った。僕らの飛行機が壊れるだなんて微塵も考えていないような笑顔だ。

「わかったよ。一緒に行こう」

「うん!」

 タロスと剣の闘神に手伝わせてシルバーホーク0式を工房から引っ張り出した。浮遊装置、推進器、すべての計器はオールグリーンだ。

「よし、出発するよ!」

 後部座席にメリッサが滑り込む。と、ここで追いついたシドとリタとララベルがシルバーホーク0式の脚に飛びついた。

「みんな!」

「私を置いていくなんてひどいよ、セラ」

「そうだそうだ! このグレネードをあのデカブツに食らわせてやるんだから」

「いいから、さっさと飛べよ。おいていかれちまうぜ」

 もうあれこれ言っている暇はない。

「みんな、しっかり捕まっていてね。シルバーホーク0式、発進する!」

 機体がふわりと持ち上がると同時に二基のプロペラが回転速度を上げて、シルバーホーク0式は緊急発進した。目指すは西に遠ざかる巨大戦艦だ。あれを何とかするには、オーケンたちが戦艦の運用に慣れていない今が最後のチャンスだろう。乾いた大地にプロペラの唸りが大きく響き渡った。