格納庫内はさっきよりも明るかった。なんと天井部分が開いていて、赤味を増した夕方の空が見えていた。周囲の様子を窺うと、異音を立てながら戦艦アヴァロンが浮かび上がるところだった。開口部から外へ出るつもりなのだ。

「待て!」

 僕は走って追いかけるが、すでにアヴァロンは30m以上浮かんでいる。ジャンプをしてもギリギリで追いつくことができなかった。

「遅かったか」

 僕の次に格納庫へ入ってきたメリッサも呆然と浮かび上がるアヴァロンを眺めている。何とかならないのだろうか? 使えそうなものはないかと周囲をみると、地上に向かって伸びる鉄柱が見えた。あれはエレベーターか!

「あれに乗る!」

 叫んで向かうと、穴から這い出してきたデザートホークスたちも、次々と僕の後に続いた。

 エレベーターに飛び込み、すぐに上昇ボタンを押した。乗っているのはデザートホークスの仲間だけだ。パミューさんたちを待っている暇はなかった。


 エレベーターの出口は砂漠の真ん中に突き出ていた。以前にこんなものを見かけた記憶はない。おそらく格納庫の天井が開いたときに出現したのだろう。僕たちが地上へ着いたとき、アヴァロンはすでに大地から100m以上も上昇していた。

「ミレア、僕を抱えてあそこまで飛べる?」

「夜ならそれも可能だけど、まだちょっと無理だわ……」

 マントで直射日光を遮りながらミレアは答えた。ヴァンパイアである彼女にとって、太陽光線は殺人光線と同義だ。太陽が沈むまではあと一時間くらいはかかりそうである。

「くっそぉ、もう、手はないのかよ!」

 ララベルが悔しそうに空を見上げる。

「いや、まだ手はあるさ!」

 僕はグランダス湖の湖畔にある自分の工房へ向かって走り出した。