地下十階へ戻った僕たちは、パミューさんたちと合流した。再び長い通路を抜けて格納庫を目指す。ところが、格納庫の手前まで来て、僕らは異変に気がついた。

「扉が閉じているぞ!」

 パミューさんに指摘されるまでもない。何重ものロックが掛かった金属製の扉は閉鎖されてしまったのだ。

「あーはっはっはっ、残念だったな。もうこちらには入って来られないぞ」

 壁に設置されているスピーカーからオーケンの声が聞こえてきた。

「ここを開けないか! 命令だぞ!」

 パミューさんが叫ぶが、言うことを聞くようなオーケンではない。

「本当はお前たちなどなぶり殺しにしてやりたいところだが、姉と小僧の命を助けないとエリシモ殿下は古代語の翻訳をしてくれないからな。命だけは助けてやるからありがたく思え」

「セラ! お姉さま、逃げてください。早く!」

 オーケンの後ろからエリシモさんの声が聞こえる。

「エリシモ、オーケンの言うことなど聞くな。すぐに戦艦を止めるのだ」

「私には無理です」

「それでも帝国の皇女か! これは祖国存亡の危機なのだぞ。オーケンの脅しに屈してはならん。たとえ死んでもアヴァロンを止めろ」

「無理なのよ……、だって、言うことを聞かないとセラに向けて主砲を発射するって……」

 オーケンの奴め、僕を脅しの種に使っているのか? 怒りに任せて「解体」でロックを外そうとしたら、僕の体に電撃が流れた。

「ひゃっはっはっはっ! 言い忘れていたけど、その扉を無理に開こうとするとひどい目に遭うらしいぜ。まったく、古代文明ってのは恐ろしいよなぁ」

 攻撃性を持った防御壁か。

「お前たちはそこで俺様が世界の覇王になるのを見ておけ。この艦はそろそろ出発だ。じゃあな!」

 周囲にアラームが鳴り響き、異様な振動が体に伝わってきた。戦艦が動き出そうとしているのか? こうしてはいられない。

「どうする、セラ? マジックグレネードで扉を破壊するか?」

 ララベルが提案してくるけど、マジックグレネードの威力ではかすり傷をつけるのがせいぜいだろう。

「いや、扉がダメならこっちだ!」

 僕は壁に手をついてスキャンを施す。壁は鉄板入りの分厚いものだったけどスキルを使えば通路は作れそうだ。ありったけの魔力をフル回転させて壁に穴を開けていく。やがて人一人が通れるくらいの穴が壁にできた。

「よし、突入する!」

 僕は這いつくばり、匍匐前進で穴の中を進んだ。