「うむ、お前たちは少し休憩をとれ。そこの部屋を使っていいぞ。今のうちにタバコでも吸っておけ」

 エイミアさんが指さした部屋には椅子とテーブルが置かれていた。

「ありがとうございます!」

 喜んで部屋に入ろうとした兵士たちをエイミアさんが呼び止める。

「行く前に上着とヘルメットを脱いでいけ」

「上着とヘルメットをでありますか?」

「そうだ。つべこべ言わずにさっさと脱げ」

「はい、承知いたしました!」

 兵隊は軍服を脱ぐと部屋の中へ駈け込んでいった。

 エイミアさんは通路の隅に置かれた二枚の軍服を拾い上げた。

「殿下、むさくるしい服ですがこちらを着てください。セラ君も」

 格納庫内は中央制御室のモニターで監視されている。軍服とヘルメットを着用すれば少しは偽装できると考えたのだ。僕の分はかなりサイズが大きかったけど、改造を使って袖と丈を調整してしまった。

「パミューさんはどうです。大きくはありませんか?」

「いや、逆にちょっときつい……」

 僕は思わず赤面してしまう。見ると胸のところがパツンパツンでボタンが閉まらない状態だったのだ。自分の軍服で余った布をパミューさんの軍服に組み合わせて、チェストを少しだけ緩くしてあげた。

「これでどうでしょう?」

「うむ、いい感じになった」

 それでもまだ少しきつそうだった。タイトな軍服姿を見たせいか、パミューさんを初めて異性として意識してしまったよ……。

 バカバカバカバカ、僕のバカ。変なことを考えている場合じゃないぞ。危険な人間が世界で最も強力な武器を手に入れようとしているのだ。なんとしてもこれを阻止しなければならないこのときに、パミューさんの胸のことを気にしている場合か。

「行きましょう、急がず、慌てず、堂々とです」

 僕らはあたかも命令を受けた小隊のように、毅然と整列して格納庫を横切っていった。


 格納庫を出てしまうと、もう心配はなかった。エイミアさんはすぐに兵士たちを集めてパミューさんの護衛にあたらせた。

「このまま攻め入り、戦艦とエリシモを奪い返す!」

 パミューさんは怒りのままにそう言うけれど、それは現実的じゃない。

「無茶ですよ。相手は特殊部隊のカジンダスです。パミューさんだってあいつらの実力はわかっているでしょう?」

 こちらの方が兵士の数は倍くらいいるけど、それでどうにかなるような相手ではないのだ。あっという間に皆殺しになってしまうだろう。

「すぐにデザートホークスの仲間を呼んできます。少しだけ待っていてください」