押し黙ったパミューさんの瞳から涙がこぼれた。こんな仕打ちを受けるのは生まれて初めてのことなのだろう。

「見ろよ、あのパミュー殿下が泣いているぜ」

 二人の男はさも可笑しそうにせせら笑う。カジンダスに馬鹿にされてもパミューさんはなにも言い返せなかった。

「解体」でロックを外すと、僕はすぐさま部屋に踏み込んだ。特殊部隊だけあって二人の反応は速かったが、雷撃のナックルを使って意識を即座に断ち切る。見張りは声も立てずに床に沈んだ。

「セラ!」

 縄を解いてあげるとパミューさんは僕に抱き着いて、オイオイ泣いた。

「怖かったのだ。心細くてもうダメかと……うえーん!」

「もう大丈夫ですよ。速くここから脱出しましょう」

「うん……、でもまだ動けないのだ。もう少しだけこうしてセラの胸に……」

 パミューさんの瞳がうるんでいる。

「殿下、お急ぎを」

 扉の外を見張っていたエイミアさんが顔を出した。

「げっ、エイミア! い、居たのか?」

「はあ、その、先ほどからずっと……。申し訳ございません」

「い、いや、生きていてくれたのは嬉しいのだが……、今見たことはすべて忘れろ!」

「ハッ! ただいまをもって記憶を消去いたしました!」

 絶対に嘘だ! まったく、こんな茶番劇に付き合っている時間はないぞ。

「さあ、お二人とも行きますよ。まずはパミューさんを安全な場所までお連れします」

「エリシモとアヴァロンを放置していくのか?」

「敵の数が多すぎるんですよ。地下九階で僕の仲間が待機しています。エリシモさんと戦艦の奪取は、仲間と合流してからです」

 幸いカジンダスの連中は戦艦の概要を知るために中央制御室に集まっている。メインモニターには格納庫の様子しか映っていなかったから戦艦を脱出するのは難しくないだろう。僕らは無人の通路を出口に向かって走った。


 戦艦の出口では兵士たちが見張りをしていた。彼らはまだカジンダスの裏切りを知らない。

「おい、お前たち。二人ほどついて来い」

 エイミアさんが呼ぶと兵士たちは素直に入ってきた。

「なんでありましょうか大尉殿?」