死体は無造作に廊下へ放り出された。カジンダスの奴らが去ると、僕は大慌てで親衛隊員の体を確認していく。この人もダメか。こっちは出血多量によるショック死だ、たぶん即死だな。絶望で頭が痛くなってくる。

「……ぐ…………」

 今、人の声が聞こえたような……。どこだ!? どこから聞こえた。もう一度何かサインを出してくれ。

「で……んか……」

 か細い声の先に血だらけのエイミアさんが横たわっていた。僕は弾かれたようにエイミアさんの体に取り付き、間髪を入れずに「修理」を施していく。そして耳元でささやいた。

「絶対に大きな声を出さないでください。このまま死んだふりですよ」

「セラ……君……?」

 朦朧とした声でエイミアさんが囁きかえしてくる。幻を見ていると勘違いしているようだ。

「そう、僕ですよ。ほら、手を握ってください」

 すぐに「修理」が進み、エイミアさんの手に力がこもった。

「セラ君!」

「静かに。隙を見てここを離れましょう。まずはパミューさんを探さないと」

「承知した。助かったよ、セラ君」

 エイミアさんの治療が終わると、僕は他の隊員たちの体も確認した。だけど助けられる人は一人もいなかった。

「行きましょう」

「だが、エリシモ殿下はどうする?」

「オーケンたちにとって古代言語が読めるエリシモさんは重要人物です。すぐに命を取られることはないでしょう」

 僕らはパミューさんを探すべく動き出した。


 パミューさんの行方はすぐに判明した。大きな声で見張りの二人を怒鳴りつけていたからだ。のぞき穴を作って部屋の中の様子を窺うと、ロープで体を拘束されたまま椅子に座らされているパミューさんが見えた。傍らにはカジンダスの二人が見張りをしている。

「お前たち、考え直すのなら今の内だぞ! 今ならお前たち二人の罪は問わん。それどころか、救国の英雄として爵位を授けてやってもいい!」

 パミューさんは一生懸命自分を逃がすように説いていたけれど、見張りの心を動かすことはできないでいるようだ。

「男爵ではどうか? なんなら領地と子爵位をくれてやるぞ!」

「黙っていろ。肉を切り裂くぞ」

 頬にピタピタとナイフを当てられ、パミューさんは息を飲んだ。ナイフの先端がゆっくりとパミューさんの顔を這っていく。

「少しでも動けば、お前の顔に傷がつく。たとえそうなったところで人質としての価値は変わらんさ。喚きたければ喚け。お前が選んでいいぞ」

「……」