「それはどういうことだ?」

「この船は言葉を理解して、命令を遂行できるのよ。今は会話を聞かせて、アヴァロンに私たちの言語を覚えさせているところよ。地上の音声も拾っているわ。エルドラハの人々の会話を聞けば、あと10分ほどで学習は完了するはずよ」

 細かい制御はAIのようなものがやってくれるということだろう。それにしてもすごい技術だ。さすがにこれをスキャンしようとしても、解析の終了に何年かかるかわからないほどだ。

「船の飛行速度や武装はどうなっておりますかな? 皇帝陛下がもっとも関心を示されているのはその点です」

 今度はオーケンが質問している。

「詳細なデータは後で書面にして渡します。ざっと見た感じでは飛空艇など物の数にも入らない恐ろしい船のようだわ。扱いは厳重にしないと……」

「それほどですか?」

「ええ、これを乗っ取られれば帝国が滅びます」

 古代文明の戦艦は化け物か、それほどの性能を有しているとは……。

「ふふふ……そうかい……くふふふ……この船の能力はそこまでかい……あーはっはっはっはっはっはっ! ひぃーひっひっひっ!」

 突如、オーケンは狂ったように笑い出した。

「どうしたというのだ、オーケン?」

 パミューさんは恐怖を感じたのか、一歩後ろに足を引いている。

「いーひっひっひっ、だってよぉ、これ一隻で帝国を滅ぼせるんだろう?」

「それはもののたとえです。街を制圧するには兵士も必要でしょうし、船一隻では……」

「ああ、そういうのは俺の方がわかっているから説明しなくても結構だ。この船で帝国の飛空艇をすべて破壊し、制空権を握っちまえば後はどうにでもなる」

「貴様はなにを……」

 いぶかるパミューさんを無視してオーケンはカジンダスの面々に向き直った。

「おいお前ら、世界を手に入れてみないか?」

 こいつ、まさか……? 慌てて飛び出そうとしたけど遅かった。オーケンはパミューさんの首筋にナイフを突きつけている。

「俺についてくるってやつはいないか? 世界の半分をくれてやるぜ、お前たちで仲良く分ければいい」

 カジンダスの連中は言葉を失ったが、誰もオーケンに逆らう様子をみせない。

「おいおい、今の生活に満足しているやつなんて一人もいないだろうが。こいつの性能は訊いての通りだ。俺についてくれば領主や国王になれるんだぜ。なんでも好き放題だ」

「…………」

「まだ腹が決まらねえか? どんなにうまくやったところで、このまま歳をとっていずれは除隊だ。恩給で安酒を飲みながら昔の武勲を誇る未来しか俺たちにはねえんだぞ。それだって任務で死ななければの話だぜ」