「はたしてセラがそれを喜ぶかしら……」

 エリシモさんは小さなため息をついた。

「あれも大人になればその価値がわかるはずだ。今はまだ遊んでいたい年頃なのだろう。エリシモだってそう思うだろう?」

 エリシモさんは何も答えずにパネルの操作をしている。

「よし、これで地下格納庫の全システムが復旧したはずよ」

 格納庫? ここはそういう施設なのか。だったらアヴァロンというのは……。

 エリシモさんはメモを取りながらパネルをいじり、パミューさんは無言でそれを見守っていた。二人にそれ以上の会話はなく、重苦しい時間が流れていく。だが、五分くらい経つとエイミアさんが部屋の中へ入って来た。

「報告します。封鎖されていた扉の解除が確認されました。いつでも通れます」

 二人のお姫様は立ち上がった。

「行きましょう。なんとしてもこの任務は成功させなければならないわ」

「ああ、そのために皇女たる我々が派遣されて来たのだ」

 二人はタブレットを持ち上げて部屋を出ると、カジンダスを引き連れてさらに奥へと向かった。いよいよ隠された秘密とご対面のようだ。僕も足音を忍ばせながら、みんなの後をついていった。


 長い通路をひたすら東へ進んだ。ただの通路じゃない。大きな駅ではお馴染みの動く歩道が設置されている。水平エスカレーターというのがこれの正式名称らしい。

「床が動くぞ!」

「なんだこれは? ははは、自分の歩行が速くなったみたいだ」

「縮地のスキルを得たみたいだぞ!」

 兵士たちは大はしゃぎだ。

 通路は真っ直ぐ続いて、2㎞くらいは移動したと思う。ここはもうエルドラハからは少し離れた場所になっているはずだ。やがて一行の前に巨大な扉が現れた。

「着いたわ」

 前に進み出たエリシモさんが古文書をかざすと、何重ものロック機構が開く音がして正面の金属扉がスライドした。

 扉の向こうはだだっ広い空間だった。使い古された言い方をすれば、東京ドーム六個分くらい。天井までの高さも優に300mはある。そんな空間の中央にとてつもなく大きな物体が鎮座ましましている。壁一面に取り付けられた照明器具の光を浴び、浮かび上がったそれの姿に声を上げそうになってしまった。

 だってそこにあったのは巨大な船だったから。いや、船という形容は間違っているかもしれない。そもそも砂漠に船があるのはおかしい。水なんてないんだから。全長は400m以上あるだろう。高ささも50mくらい。巨大ではあるが全体的に平べったい印象のフォルムをしている。