目の前にいるのが神様じゃないとわかってホッとした。これで気兼ねなく質問をぶつけられるというものだ。まだ書類を眺めているシステムさんに訊いてみた。

「僕はどんな世界へ行くのでしょうか? それとどんな人間に生まれ変わるのでしょう?」

 システムさんはニヤリと笑う。その表情が人間臭くてドキッとした。本当にAI?

「あなたの好きな剣と魔法の世界ですよ」

 おお! 僕はゲームやアニメ、ラノベなんかが大好きだ。異世界転生はちょっと憧れていたシチュエーションである。

「まあ、貴方が行くのはエルドラハという砂漠の収容施設ですけど」

「収容施設!?」

 なんだか雲行きがあやしくなってきたぞ……。

「安心してください。収容施設と言っても普通の町と変わりありません。ただ町の外に出られないだけです」

「どうして町から出られないんですか?」

「何千キロもある砂漠のど真ん中にあるからですよ」

 サハラ砂漠の中にあるオアシスみたいなところだろうか? でも収容施設とオアシスでは全然違うぞ。

「エルドラハでしたっけ? そこで僕は何をすればいいんですか?」

「エルドラハの地下には迷宮が広がっていて、そこには魔力が結晶化したものが落ちています。それを拾い集めて生活してください」

「他には?」

「他に、と言われましても……、人生の目的はそれぞれですから」

 たしかにそんな気はする。次の質問をしてみよう。これもかなり大切なことだ。

「十歳の少年の肉体に転生するという話ですが、どんな子なんですか?」

 健康状態や容姿、親の財産で人生は大きく変動する。どうせならイージーモードがいい。

「超が付くほどの美少年です。親はグランベル王国という国の伯爵です」

 思わずガッツポーズをとってしまった。これぞ、ザ・イージーモード! フツメンから超美少年へのランクアップ。しかも親は貴族。理想的な異世界転生じゃないか!

「といってもグランベル王国はエブラダ帝国に滅ぼされましたけどね。貴方の両親は殺され、貴方は砂漠の収容所に送られてしまっているのです」