二人で捕まった方が逃げるのも簡単だろう。僕があくまでもメリッサをかばうのを見て、パミューさんは子どものように地団太を踏んだ。

「なぜだ、なぜそうまでしてこの女をかばう?」

「だってメリッサは仲間です。それに……」

「それになんだ!?」

「僕の許婚でもあるんです」

「なん……だと……」

 パミューさんは驚愕の瞳でしばらく僕らを見ていたが、やがて踵を返して無言のまま立ち去ってしまった。どうやらこの場は収まったらしい。僕もオーケンに喧嘩を売っているから人のことは言えないけど、帝国皇女につっかかるなんて無茶もいいところだ。

 僕らの後ろに集まってきていたデザートホークスのメンバーたちもほっと胸をなでおろしていた。

「あービックリした。逃亡生活が始まるのかとひやひやしたぜ」

 シドが笑いながら頭をかいている。

「アタシはいつだって家出の準備はできているからね。セラと一緒に飛空艇を奪ってトンズラしたってかまわないさ」

 ララベルは楽天的だ。

「あー、メリッサったらとんでもないドヤ顔をしているわよ。皇女の前で許嫁宣言されたからっていい気にならないで」

 ミレアがメリッサを指さして叫んでいた。メリッサのドヤ顔? そんなの見たことない。興味に駆られてメリッサを見ようとしたけど、顔を背けられてしまった。メリッサと顔があったリタも指をさす。

「ほんとだ! メリッサのくせにニヤケちゃって、氷の鬼女らしくないっ!」

 メリッサがにやけている? 信じられない!

「メリッサ」

「またあとで」

 メリッサは顔を隠しながら走って部屋を出て行ってしまった。メリッサはどんな顔をしていたのだろう。気になって仕方がなかった。

 シドが寄って来て僕の脇腹を肘で小突いた。

「ついにセラも年貢の納め時か? ハーレムを解体してメリッサに決めるわけだ」

「何を言っているんだよ。メリッサが国の決めた許嫁ってことはみんな知っているだろう? だから僕はかばったわけで、本当に結婚するかはまだ保留だよ……」

 十三歳の子どもにそんなことを決めさせないでほしい。

「そうよ、シド。余計なことを言わないで!」

「変な口を挟まないの」

「シッシッ!」

 リタ、ミレア、ララベルにまで邪険に扱われるシドはかわいそうだった。