「じゃあどうして?」
「セラと一緒にいたいから」
曇天模様の空が一気に晴れ渡るような気持ちになった。
「よかった。本当によかった。告白するとね、昨日はメリッサのことが気になって一睡もできなかったんだよ」
「私も」
見ればメリッサも目の下にくまを作っていた。
「ちょっと触れるけどいい?」
「うん」
僕はメリッサの頬に指を伸ばし「修理」のスキルを展開する。顔色はすぐによくなった。
「セラと仲直りができてよかった。でも、帝国に対する恨みが消えたわけじゃない。帝国のせいでセラと仲違いするのも馬鹿馬鹿しいと思っただけ」
「そうだね。僕らがけんかをすることなんてないんだ。よし、出発しよう」
僕はタンクを起動してアクセルを踏み込む。前を見るとシドも自分のタンクを操縦しながら左手を高く掲げて親指を立てていた。どうせいつものようにニヤニヤと笑っているのだろう。
調査隊はダンジョンの中をのろのろと進んだ。最前列を歩く冒険者たちはエルドラハ屈指のトップチームだから、討伐速度も速いし、トラップ解除もあっという間だ。本来ならサクサク進めるはずなんだけど、いかんせん帝国兵の数が多すぎるのだ。
百人もの大所帯を狭いダンジョンに連れ込んで、パミューさんたちは何をさせたいのだろうか? ただ、理由もなくこんなことをしているのではないような気がする。きっと、目的地に着いてから人員が必要なのだろう。
パミューさんは将軍位を持っているだけあってきびきびと命令を下していた。兵士たちの練度も悪くない。だけど、いちばん目をみはったのはカジンダスという特殊部隊だった。
彼らはダンジョンには慣れていないはずなのに、まるで一流の冒険者のように適応していた。しかも、モンスターを相手に相当な強さを見せつけている。おそらく戦闘力判定はBクラス以上の者がほとんどだろう。
「隊長、どうしたんですか? 普段は一番前で戦っているのに」
隊員の一人がカジンダスの隊長であるオーケンと話しているのが聞こえてきた。
「俺は人間が相手じゃないとやる気が出ないんだよ。泣き叫ばない相手は殺してもおもしろくないだろう? 四つ足のモンスターはお前らにまかせるわ」
嫌な奴である。人殺しが趣味だと自称しているようなものだ。僕はすぐにオーケンという男が嫌いになった。そして一つの予感が心に生じた。いつか僕はこいつと衝突する、という予感だ。
シドはオーケンに近づくなと言ったけど、こればかりはどうにもならない気がする。愛する者が惹かれ合うように、嫌いあうものの間にも妙な重力ってものが存在している気がするんだ。
「セラと一緒にいたいから」
曇天模様の空が一気に晴れ渡るような気持ちになった。
「よかった。本当によかった。告白するとね、昨日はメリッサのことが気になって一睡もできなかったんだよ」
「私も」
見ればメリッサも目の下にくまを作っていた。
「ちょっと触れるけどいい?」
「うん」
僕はメリッサの頬に指を伸ばし「修理」のスキルを展開する。顔色はすぐによくなった。
「セラと仲直りができてよかった。でも、帝国に対する恨みが消えたわけじゃない。帝国のせいでセラと仲違いするのも馬鹿馬鹿しいと思っただけ」
「そうだね。僕らがけんかをすることなんてないんだ。よし、出発しよう」
僕はタンクを起動してアクセルを踏み込む。前を見るとシドも自分のタンクを操縦しながら左手を高く掲げて親指を立てていた。どうせいつものようにニヤニヤと笑っているのだろう。
調査隊はダンジョンの中をのろのろと進んだ。最前列を歩く冒険者たちはエルドラハ屈指のトップチームだから、討伐速度も速いし、トラップ解除もあっという間だ。本来ならサクサク進めるはずなんだけど、いかんせん帝国兵の数が多すぎるのだ。
百人もの大所帯を狭いダンジョンに連れ込んで、パミューさんたちは何をさせたいのだろうか? ただ、理由もなくこんなことをしているのではないような気がする。きっと、目的地に着いてから人員が必要なのだろう。
パミューさんは将軍位を持っているだけあってきびきびと命令を下していた。兵士たちの練度も悪くない。だけど、いちばん目をみはったのはカジンダスという特殊部隊だった。
彼らはダンジョンには慣れていないはずなのに、まるで一流の冒険者のように適応していた。しかも、モンスターを相手に相当な強さを見せつけている。おそらく戦闘力判定はBクラス以上の者がほとんどだろう。
「隊長、どうしたんですか? 普段は一番前で戦っているのに」
隊員の一人がカジンダスの隊長であるオーケンと話しているのが聞こえてきた。
「俺は人間が相手じゃないとやる気が出ないんだよ。泣き叫ばない相手は殺してもおもしろくないだろう? 四つ足のモンスターはお前らにまかせるわ」
嫌な奴である。人殺しが趣味だと自称しているようなものだ。僕はすぐにオーケンという男が嫌いになった。そして一つの予感が心に生じた。いつか僕はこいつと衝突する、という予感だ。
シドはオーケンに近づくなと言ったけど、こればかりはどうにもならない気がする。愛する者が惹かれ合うように、嫌いあうものの間にも妙な重力ってものが存在している気がするんだ。