安全な小部屋にリタを運ぶと、僕は通路から荷物を回収した。死んだ人たちが持っていた装備や道具、採取した魔結晶を残していくのはもったいない。これまでの僕なら一〇キロの荷物でも辛かったけど、今なら一〇〇キロ背負っても余裕な気がする。持てるだけ持っていくつもりだった。

「ただいま。荷物を回収してきたよ。食料もあったから、出発前に腹ごしらえをしておこうね」

「ごめん。おかげで私の体もすっかり良くなったわ。料理は私がやるからセラは少し休んでいて」

「それなら僕は装備を修理するよ」

 リタの鎧はボロボロだったし、剣も刃こぼれしているようだ。

「そんなこともできるの?」

「うん、『修理』ってスキルは基本的になんでもなおせるみたい」

「治癒師であり、魔道具師みたいな感じかな?」

「今はまだモノをなおすことしかできないけど、数をこなせば新しいスキルも発現するんだって。だから、なおしてほしいものがあったら遠慮しないでどんどん言ってね」

「じゃあ、とりあえずこの服を何とかしてもらえる?」

 リタは頬を赤らめながらお願いしてきた。それもそのはずで、リタの服は戦闘であちこち破けている。服の切れ目から大きな胸の谷間やおへそまで覗いているくらいだ。

「う、うん。すぐにやるね」

 魔力を送り込むと、ほつれた糸が生き物のようにうねうねと動き出して、互いにくっつきあった。血や汚れなども同時に取り払って綺麗にしていく。

「すごい……」

「後で剣や鎧も直すからね。剣の切れ味もよみがえるはずだから期待して」

 僕が装備を修繕して、リタは料理を作ってくれた。メニューは焼き直したパンと干し肉の入ったスープ。干し肉と言ってもエルドラハでは貴重品である。意外と言ったら失礼かもしれないけど、リタの作ったご飯は美味しかった。

「このスープ、すごく美味しい!」

「これでも料理は得意なの。遠慮しないでたくさん食べてね」

「えへへ、美味しくて幸せだな」

「も、もう、余計なことを言ってないで早く食べなさい!」

 誰もが恐れる迷宮地下四階だというのに、なんだかほっこりとした空気が満ちていた。
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