「それがね、きっかけはセラがロックを解除してくれたこの古文書なのよ。私はあれからずっとこれの解読に勤めてきたの」

 エリシモさんは金属のブックカバーがついた大きな古文書を取り出した。

「え、その古文書にエルドラハのことが書いてあったんですか?」

 エリシモさんは頷いて、少し詳しいことを教えてくれた。

「そうなの。エルドラハのダンジョン地下十階には古代文明の遺物が眠っているのよ」

「古代文明の遺物って何ですか?」

 まさか、デザートフォーミングマシンのことじゃないよな。

「それは――」

「詳しいことは何もわかっていない」

 不意にパミューさんが横から口を出した。まるでエリシモさんに余計なことはしゃべるなって言っているみたいに聞こえる……。

「今のところ詳しいことはわかっていないわ。でも、エブラダ帝国はエルドラハのダンジョン地下十階にかなり重要なものがあると睨んでいるの」

 また地下十階か。

「あの、これでも僕はエルドラハのトップチームのリーダーです。ダンジョンの奥まで潜ることもあります。でも、地下七階より下にいく階段なんて見たことがありません。噂だけならあるんですが、本当に地下八階へ行ける階段は存在するのでしょうか?」

「あるわ。この本にはどうすれば到達できるかも書かれているの」

 エリシモさんは古文書を指さして頷く。その表情は自信にあふれていて揺るぎがない。

「もしかして隠し扉?」

「それに近いわね。地下八階に通じる階段を見つけるには、正しいルートを通ってそこへ至らなければいけないのよ」

 なるほど、一定の道順を経なければ階段は現れない仕掛けか。どれくらいの確率かはわからないけど、過去に偶然正しいルートを通った冒険者が階段を発見したのだろう。それで噂が残ったんだ。

 でも、自分たちが通ったルートを記録しておかなかったから、二度と階段を見つけることはできなかった、そんな感じなのだろう。

「我々は明日にでも調査隊を組織する。セラ、お前も私たちと一緒に来い」

 また、パミューさんは僕に命令する……。でも、地下七階より下のことが気になるな。

「僕を案内人として雇うというわけですか?」

「お前を危険な目には合わせない。セラは私の治癒師兼料理人としてついてくるがいいだろう。護衛には精鋭をつけてやる。褒美もたっぷりとはずんでやるぞ」

 僕はその精鋭部隊よりも強いと思うんだけど、まあいいか。そういえば、パミューさんは僕の戦闘力を知らなかったな。トップチームのリーダーだと言ったのに信じてはいないようだ。