「私の誘いを断ったじゃないか」

「だって宮殿の生活なんて嫌ですもん」

「くっ……、お前は腹の立つくらい自由に振舞う奴だな。私がこうも寛大じゃなかったらとっくに首をちょん切っているところだぞ」

「はいはい、なんだかんだでパミューさんは優しいからそんなことはしませんよ」

「うるさい! 今すぐちょん切ってもいいのだぞっ!」

 あ~、はいはい。

「まあまあ、これでも飲んで落ち着いてください。エルドラハは暑いでしょう?」

 僕は家に寄って持ってきた大きなサーバーを差し出した。

「なんだこれは?」

「わずかながらダンジョンの中で果物が採集できるんです。それで作った特製トロピカルジュースです。もちろん僕のスキルを使いました」

「ふん、そんなものでごまかされんぞ!」

「要らないんですか? だったらエイミアさんと二人で飲もうかな? 青晶と緑晶を使っていて、体をひんやりと保ってくれるんです。これを飲めば暑さなんか平気になりますよ」

 エイミアさんにサーバーを渡そうとしたら、パミューさんが慌てだした。

「待て、要らんとは言ってないだろうが。暑くてかなわんから飲んでやる……」

「さすがは寛大な皇女様ですね。お毒見はエイミアさん?」

「毒見などいらん。セラが私を狙うこともないだろう」

 パミューさんがそういうとエイミアさんは明らかにがっかりした顔をしていた。またこのくだりか……。

「僕を信頼してくださるのは嬉しいですけど、これでもいちおう旧グランベル貴族の末裔なんです。念のためにお毒見はしておいた方がいいですよ」

「セラ君……君という子は……」

「エイミアさん、ジュースくらいで泣かないでください……」

 グラスにジュースを注いでエイミアさんに渡した。エイミアさんはゴクゴクとジュースを飲み干した後に真面目な顔を取り繕う。

「異常ありません!」

「いいから私の分をさっさと注げ」

 グラスにジュースを注いでいると慌ただしく扉が開いてエリシモさんが飛び込んできた。

「セラが来ているって本当なの?」


「こんにちはエリシモさん。エリシモさんも特製トロピカルジュースを飲みますか?」

「セラ……」

 エリシモさんは涙を浮かべて僕の来訪を喜んでくれた。

 再開を喜び合い少し落ち着くと、僕は改めて二人の来訪の目的を訊いた。

「お二人はどうしてエルドラハにいらしたんですか?」