エイミアさんは呆れたように僕を見て少しだけ笑顔になった。

「君は変わらないな。だがその前に殿下たちのところへ行こう」

「え、やっぱり僕は逮捕されるのですか?」

「そうじゃない。君に依頼したい仕事があるそうだ」

「また、病人を治しに帝都へ?」

「いや、エルドラハでの活動だよ」

「と言いますと?」

「ダンジョン内の考古学調査らしい。詳しくは殿下たちから直接聞きたまえ。私も詳しいことは聞かされていないのだ」

 予想とはまったく違う答えに驚いてしまった。

「それにしても変だな。これまで帝国は調査チームを派遣したことなんてなかったでしょう? 聖杯探しだって現地の冒険者たちに任せていたくらいだし……」

 情報を引き出すためにわざと聖杯というワードを使ってみた。

「聖杯? そんな話もあったな。たしか高エネルギー体の結晶だったか?」

「そうです」

「私も詳しくは知らないが、今回の調査では聖杯などとは比較にならないくらい重要な物を探すようだ。皇帝陛下もかなり本気のようで、特殊な人材が派遣されている」

 まさか、帝国はデザートフォーミングマシンそのものを探しているのか?

「小耳に挟んだのだが、それは地下十階にあるらしい」

「地下十階……」

 おかしいな。デザートフォーミングマシンは地下七階に存在するのだ。だとしたら帝国が狙っているのはまったく別のものか……。そしてやっぱり、地下七階より下の階層は存在するってことなんだな。


 エイミアさんと一緒に監獄長の家の居間へ入ると、僕の姿を認めたパミューさんの反応はすごかった。ガタっと肘掛椅子から立ち上がり、穴のあくほど僕を見つめてくる。驚きで目がまんまるになっていると思ったら、一瞬笑顔になった。ところがすぐに顔色が紫に変化して怒りの形相になってしまう。だけどそれも長くは続かず、最後はブスッと不貞腐れた表情になってしまい、どさりと肘掛椅子に座り直してしまった。

 情緒不安定かな? 一回診てあげた方がいいかもしれないけど、精神の方は僕の専門外だ。

「お久しぶりです、パミューさん」

「何がお久しぶりです、だ。この裏切り者め!」

 パミューさんは視線を合わせてくれない。

「裏切ったことなんてないですよ」