外へ飛び出して空を見上げると、北の方から三機の飛空艇がやってくるところだった。一般的に飛空艇はくすんだオレンジ色をしているのだけど、中央の機体は深緑色をしている。しかも大きい。普通の二倍はある大型船だ。

 飛空艇が三機も同時にやってくるなんて初めてのことだ。ひょっとしてパミューさんが僕に追手をかけたのか? あの飛空艇には僕を捕えるための兵士が乗っているのかもしれない。でも、それも大袈裟だよな。普通に考えれば先に監獄長へ捕縛命令が届くはずだ。わざわざ中央から兵士を派遣してくるなんて妙な話でもある。

 となると、デザートフォーミングマシンの存在がバレたか? 帝国はずっとデザートフォーミングマシンを動かすためのキーになる聖杯を狙っていた。だけど聖杯は僕とメリッサが奪取してしまったのだ。

 奴らが聖杯の存在を嗅ぎつけて兵隊を送り込んできたという可能性はある。まあ、ここでいろいろ推察していても始まらないな。虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。真相を掴むために奴らの近くまで行ってみよう。

「タロス、剣の闘神、シルバーホーク0式を工房に戻して、扉を閉めておいて」

「……」

 二体のゴーレムは無言のまま命令に従った。ゴーレムたちがいればシルバーホーク0式が盗まれることはないだろう。飛行実験のことは少し気になったけど、今はそれどころではなかった。


 他の住人に紛れて観察していると、間もなく飛空艇は発着場に着陸した。大勢の兵士たちが走り降りてきて周囲の警戒をしている。やっぱりいつもとは全然様子が違うぞ。護送された囚人が降りてくる気配もない。

「監獄長だ」

「グランダスが来たぞ」

 周囲にさざめきが広がる。みんなが固唾をのんで見守っていると、監獄長は飛空艇の代表らしき人と何やら話し合っていた。すると、すぐに監獄長の禿げ頭に汗の粒が光り出し、顔が青くなるのが遠目でもはっきりと分かった。大変なことが起きているようだ。

 やがて、兵士と監獄長の部下たちがきちっと整列しだした。いよいよ偉いさんの登場のようだ。飛空艇の扉が開き、きらびやかに正装した騎士の一団が降りてくる。そこに続いて出てきたのは……パミューさん!? それだけじゃない、エリシモさんもいるぞ! やっぱり僕を追ってやってきたのだろうか?

 このままシルバーホーク0式に乗って逃げ出そうという考えがチラッと頭に浮かんだけど、僕はその考えをすぐに捨てた。だって、僕は何も悪いことをしていないもん。それに、ひょっとしたらお姫様達はぜんぜん別の用事でエルドラハにやってきたのかもしれない。どんな用事かは想像がつかないけど、困っているのなら助けてあげてもいいと思う。