そんなこんなで月日は経ち、二週間が過ぎた。

 その日の午後も灼熱の太陽が砂漠の砂を焼いていた。工房にはエアコンを四基も設置したので熱くはない。僕は清潔な空間でシルバーホーク0式の仕上げ作業を行っていた。

「よし、完成だ」

 外見は小型のプロペラ飛行機によく似ているけど、その概念自体はまったく違う。垂直離着陸だって可能だから砂漠のどこへでも行ける仕様になっているのだ。

 飛行機というよりは飛行船に近い感じかな? 飛行船は空気より比重の小さい水素やヘリウムを気嚢につめて浮かせる乗り物だ。風船の要領だね。これに推進用の動力がついているのだ。

 シルバーホーク0式もこれと同じで浮遊装置で浮き、プロペラで推進力を得ている。ただ、普通の飛行船の速度が時速80km―120kmに対して、シルバーホーク0式は時速400㎞くらいまでは出せる設計になっている。帝都までだって半日で行けてしまうよ。

 いまのところ定員は二人だけど、今後はもっと大きいものを作って、デザートホークスのメンバーが全員乗機できるようにしたい。

「よし、さっそく飛行実験をしてみるか。タロス、剣の闘神、工房の正面扉を開けて」

 一緒に暮らすうちに、タロスや十二闘神はさらにたくさんの言葉をおぼえた。ゴーレムたちの可能性には計り知れないものがあり、僕の「スキャン」でもその技術の全容が解明されたわけじゃない。特にタロスと十二闘神は特別製のようで、まだまだ未知の領域が多いのだ。

 彼らは古代文明の遺物なのだが、こういったものを作り出せる古代人は相当な技術力を持っていたのだろう。

 正面の扉が開き、太陽の光が工房に差し込んだ。シルバーホークの機体が銀色に輝き、生命が込められる瞬間を今や遅しと待ち構えているようだ。燃料となる魔結晶をタンクに補充する。よし、起動ボタンを押すぞ。シルバーホーク0式、今こそ産声を上げるときだ。

「おい、あれはなんだ!?」

「こんなことは初めてだぞ!」

 突然、外から人の声が聞こえてきた。シルバーホーク0式を見て驚いているのか? 違う、みんなは空を見上げているぞ。

「見ろ、見たこともない機体が混じっている。あんな大きな飛空艇は初めてだ」

 新型の飛空艇がきたのだろうか? 僕は起動装置を押すこともなく、慌てて外へ飛び出した。