素材も十分に集まったのでデザートホークスは地表に戻ってきた。僕らが迫ると他の冒険者が慌てて道を開けてくれる。それもそのはずでタンクが七台も連なって通るうえに、荷物を担いだタロスと闘神たちまでもがついてくるのだ。

「すいません、すいません!」

 なんだか悪いことをしているみたいで、すれ違う人ごとに謝ってしまった。

「かぁっ、まぶしい!」

 真っ先に地上に出たララベルが大きな声を上げている。

「絶対に太陽を直接見ちゃダメだよ。目が潰れちゃうからね。最初は薄目をあけて、少しずつ慣らすんだ」

 ダンジョンからいきなりまぶしい場所に出て失明する人は多いのだ。一人だけだが、僕もそういう患者を治療したことがある。

 一息ついた僕たちはタンクで街のハズレを目指した。ここは僕があらかじめ監獄長に話をつけておいた土地だ。けっこう広いスペースだけど、何もない場所なので月々赤晶700gで借りられた。僕は「作製」でここに石造りの作業小屋を建てた。しっかりと高質化させておいたから砂嵐がきてもびくともしないはずだ。

「よし、工房ができたぞ。この中に荷物を運びこんでね」

「ここで飛行機を作るの? 泥棒とか来ないかな?」

 リタが心配するのも無理はない。僕らが鉾びこんだのは貴重な素材や大量の魔結晶なのだから。

「大丈夫、タロスや闘神たちを連れてきたのは僕らの訓練のためだけじゃないよ。ついでにここのガーディアンをやってもらうんだ」

「なるほど。このゴーレムたちが相手なら手を出すやつはいないわね。たとえいたとしても秒殺だわ」

 タロスの戦闘力判定はS、闘神たちだってAである。これに敵う冒険者なんて滅多にいないはずだ。

「まあ、殺さないように命令はしておくけどね」

 荷物の搬入は終わったので、今回の探索の報酬を山分けした。

「飛行機に使う素材の分は貸しにしておいて。そのうちにちゃんと返すからね」

「何言っているの、お姉さんはセラの血だけもらえればそれでじゅうぶん」

「そう言うわけにはいかないよ、ミレア」

「アタシだって別にいいよ。これだけあれば何でも交換できるもんな」

「ララベル……」

「酒代のかわりだ。とっておけ」

 シドはヘラヘラと笑っている。

「そんなことより俺はもう行くぜ。愛するミノンが俺の帰りを待ちわびているからな」

 シドはそそくさと出て行ってしまった。けっきょくリタもメリッサも飛空艇に乗せてくれればそれでいいと言って、今回の報酬は今日渡した魔結晶だけでいいと言ってくれた。
「ありがとう、みんな。僕はしばらく飛空艇作りに集中するよ。次の活動は未定だけど、用があるときはいつでも言ってね」

 全員が無事に戻って来られてよかった。こうして、長期にわたった素材集めの探索は終わった。しばらくはこの工房に腰を落ち着けて飛空艇の制作にかかるつもりである。さて、どんなものができあがるかな。試験飛行はどこまで行こう? そういえばこの世界の地図を持っていなかったな。どこかで手に入るだろうか?

 そういった諸々のことを考えていると、僕はワクワクがどうにも止まらないのであった。