「今度は何だよ?」

 足湯とビールで上機嫌のシドがわめく。

「これだよ」

 青晶と緑晶を使って入浴剤を作ったのだ。

「うわ、なんかスーッとするよ!」

「気持ちがいいだろう、リタ? これは体内の魔力循環を整えてくれる効果があるんだ」

「今夜はぐっすり眠れそう」

 メリッサもうっとりと目を閉じている。僕たちはしばらく足湯につかりながら、明日の行動計画などを話し合った。



 地下七階に拠点を作った僕らは十日間にわたって素材集めをした。その間にタンクは一人一台を所有するまでになったし、聖杯の間の設備も充実した。今では卓球台やサウナなんかまでもが設置されているのだ。

 食糧庫には地下六階でとってきた果物から作った果実酒の樽が並んでいるし、コカトリスの肉の燻製や、レッドボアの生ハムなんかまで貯蔵されている。生ハムは百味の聖樹から採取したメロンと組み合わせるととっても美味しかった。

 地下七階をくまなく探し、ゴーレムや金属の素材も必要以上に集めることができた。これなら当面の生活にも困らない。

 素材はたくさんあったので僕はいろんなものを作った。

「はい、これはシドへのプレゼントだよ」

「もしかして酒か?」

「残念ながら中身は入っていないけど、お酒を入れるための容器なんだ。スキットルっていうんだ」

 スキットルはアルコール濃度の高い酒を入れておくための、携帯用小型容器のことである。お尻のポケットに入れてもフィットするように丸みを帯びた形をしているのが特徴だ。

「こいつはいいや。ありがとな、セラ」

 シドはお土産のブランデーをさっそく補充していた。


 噂によるとダンジョンはさらに深い階層があるらしいけど、地下八階に続く階段はどこにもなかった。マッピングしながらあらゆるところを回ったけど、それでも見つけることはできなかったのだ。

「グランベル王国の古い文献には地下十階まで存在すると記されている」

 メリッサはそう言っていたし、黒い刃も探しているみたいだ。グランベルの王女だったメリッサが言うのだから嘘ではないと思う。だけど、それが事実なら入り口はどこにあるのだろう? これだけ探して見つからないというのもおかしな話だった。