「大丈夫、完全停止状態だよ」

「そうか。しかしあれはすごい武器だな」

「投げるのに技術がいるから、とっさに使えるのはララベルだけだと思うけどね」

「それにしたって、ゴーレムに対抗するには最高の武器じゃないか」

「そうなんだけど、紫晶600gは手痛い出費だよ」

 ゴーレムの動きを止めるには、鉄球には一つにつき200gの紫晶を込める必要があることがわかったのだ。もちろん魔結晶を入れなくても使えるのだけど、その場合はただの物理攻撃になってしまう。当初考えていたよりお財布に優しい武器ではなかったようだ。

「それでも紫晶600gでゴーレムが手に入るんならぼろい儲けだぜ」

「まあね、紫晶10㎏でも欲しがる人はいるかもしれない。案外、帝国が買ってくれたりしてね」

「ちがいねえ」

 倒したタンクのスキャンは終わった。

「よし、これも改造と修理で再利用が可能だな。もう少し時間がかかりそうだからシドはミレアを連れて周囲の偵察に出て」

「了解。まあ、ゆっくり改造でもしていてくれ」

 新たなタンクを手に入れるべく、僕はスキルを展開した。


 夕方になるころに、僕らはようやく聖杯の間に到着した。いよいよここを住みやすい前線基地に改造するのだ。

 この日はタンク型の他にポーン型(兵士)のゴーレムも撃破し、改造の末に配下にすることができた。ポーン型は体長が178㎝ほどで、関節の動きなどは人間に酷似している。ただ、顔はのっぺりとした仮面のようだった。

 戦闘力判定はゴーレムの中では最弱のDマイナスで、戦いにはあまり役に立たない。でも手先は器用だし、こちらの出す命令をよく理解するのでお手伝いのアンドロイドのように使うことにした。

「ポン太、この箒で掃除をお願いね」

「ピピッ」

 喋ることはできないけど、電子音みたいな返事はできる。非常に優秀なアシスタントだ。さっそく広間の掃除を始めたぞ。掃き掃除に、拭き掃除、こびりついた油汚れも丁寧に拭き取っている。前世で見たロボット掃除機よりもさらに優秀であった。

「ポン太ってあいつの名前?」

 ララベルが笑っている。

「そう、ポーンだからポン太だよ」

「ふーん、そんなことよりセラ、アタシはお腹が空いちゃったよ」

「そうだね、今日はみんな頑張ったから、夕飯はスキルで料理をするよ」

「いやったぁ! セラの特別料理だな」

 探索中は時間を節約するために簡単な食事で済ませていたのだ。夕飯には魔結晶を使った特別料理を出して、みんなを労っておいた。