力を籠めると、石を砕いて指が床にめり込んだ。厚みのある敷石だったので、そのまま5㎝ほど突き刺すと、指先に当たる感触が変化する。石の下の地層に指の先端が到達したのだ。

「みんな下がっていて」

 これは中々重たいな。レッドボアよりさらに重量がありそうだ。下腹に力を入れて全身に魔力を巡らせた。そうやって体に力を込めて腰を使ってエイッとばかりに持ち上げる。ピシリと床に亀裂が入り、大きな石板が通路の端にめくられた。

「おおっ!」

 みんなが歓声を上げている。額の汗をぬぐいながら見ると、なんとそこは黒晶の鉱床だった。黒光りしている六角柱の魔結晶が辺り一面びっしりと詰まっているではないか。

「すごいや! 一回でここまでたくさんの魔結晶を見つけるのは始めてだ。お手柄だよ、メリッサ」

 他の人にはわからないと思うけど、メリッサは人差し指で頬を掻きながら照れている。

「これで飛べる?」

「浮遊装置の材料としては八割ってところかな」

 僕らは嬉々として黒晶に飛びつき、一粒も残さずタンクに積み込んだ。


 探索初日は地下五階に泊まり、翌日は地下七階を目指した。

「今日は地下六階で材木と食材を調達してから、地下七階の聖杯の間へいくよ」

「材木ということはトレントを狩るんだね?」

 リタが訊いてくる。

「その通り。みんなのベッドを作るための材料だから火炎系の攻撃はしちゃダメだよ。リタはフレイムソードの火炎機構をオフにしておいてね。ララベルもマジックグレネードは厳禁だ」

 素材が燃えたりバラバラになったりしたら台無しである。

「うふふ、ついにお姉さんの出番のようね」

「全部凍らせる」

 ミレアとメリッサが張り切っている。メリッサが氷狼の剣を振れば、精霊狼を召喚できるのだ。氷属性の精霊狼の寒気はすべてを凍てつかせるから、これでモンスターの動きを止め、僕とミレアでとどめを刺せば倒せない敵はこの階層にいない。

「くれぐれも油断しないでね。それからゴムの木を見つけたら僕に報告して。「抽出」で天然ゴムも取っておきたいから」

 素材を集めながら僕らは地下七階へ通じる階段へと移動していった。