デザートホークスは他には類を見ないスピードでダンジョンを進んだ。斥候のシドは優秀であらゆる敵やトラップを見逃さなかったし、荷物はポーターの代わりに強力なタンクが運んでくれる、そのうえメンバーの一人一人がトップクラスの冒険者なのだ。

 僕らはお昼過ぎには目的地である地下五階に到着してしまった。

「よーし、ここからは速度を落として、魔結晶を探しながら行くよ」

 魔結晶は地中から突き出していたり、崩れた壁の中から現れたりすることが多い。ときには天井一面に生えているなんていうラッキーなこともある。僕たちは上下左右と目を配りながらゆっくりと進んだ。

 ダンジョン地下五階ともなると、なまなかのチームではたどり着くこともできない場所である。ライバルが少ない分だけ魔結晶の採取率は格段に上がり赤晶や青晶、黄晶なんかも見つかりだした。

「セラ」

 クイクイと袖が引っ張られると思ったら、メリッサが僕を呼んでいた。

「どうしたの、敵の気配?」

「そうじゃない。あそこ」

 メリッサは指を差したけど、僕には何なのかわからない。ランタンの光に浮かんでいるのは真っ直ぐに続く石畳の通路だけだ。

「こっち、来て」

 メリッサは数メートル先まで僕を引っ張っていく。

「おいおい、なにがあるっていうんだよ? あ、もしかしてセラの手を握りたかっただけか?」

 シドがニヤニヤと笑っている。でも、メリッサがダンジョンでわざわざそんなことをするはずがない。

「まったく、最近の若いのは大胆というか――」

「シド、黙っていて。たしかにおかしい……」

「なにがだ?」

 僕とシドは足元の床を見つめた。

「うん? そう言えば石畳が微妙に持ち上がっているような気がするな……。トラップじゃないようだが……」

 ここの石畳は周囲よりも1~2㎜高くなっているのだ。もしかして……。

「セラならひっぺがせる」

 メリッサが床を指さしながら頷いた。

「わかった、やってみるね」