タロスは十二闘神を率いる体術マスターのゴーレムである。戦闘力判定はSで、僕が知る中では最強のゴーレムなのだ。

「でも、ゴーレムを連れてきて大丈夫かしら? ガーディアンの数が減っちゃうわよ」

「今のところ帝国の調査も入っていないからいいんじゃないかな?」

 地下七階への階段の場所を知るチームも、デザートホークと黒い刃だけである。ガーディアンが二体減ったところで問題はないだろう。

 ゴーレムたちは喋れないので、技を伝授するのは難しいと思う。でも型だけならすぐに学べるし、データを解析すれば秘伝書のようなものだって作り出せるかもしれないぞ。

「せっかくだからタロスと十二闘神の技をすべて修めてしまおうかな? 役に立つかもしれないし」

 つまり体術に加えて、剣、槍、杖、斧、槌、弓、棍、薙刀、鞭、鎌、短剣などの使い方である。

「もう、セラは欲張りね」

 僕たちは草地の上で笑い合った。



 数日間は探索準備のために奔走した。今回はただ黒晶や金属を集めるだけじゃなく、かつての聖杯の間に居住空間を作ろうという話になっているのだ。僕とシドは二人して市場まで食料の買い付けに来ていた。

「地下七階にベースキャンプがあれば、長期の探索に便利でしょう?」

「それは言えるな。ベッドなら、マントに包まって寝るよりずっと疲れが取れる」

「それだけじゃないよ。冷蔵庫にテーブル、娯楽用品も置いておきたいね」

「冷蔵庫だと? つまり一日の探索の後に冷えたビールが飲めると……?」

「それはシドの頑張り次第だよ」

 スキル「発酵」と「改造」を使えば、極上のビールが作り出せるのだ。

「く、悔しいが俺はもうセラには逆らえる気がしねえ……」

「本当かな? 僕が水中に偵察に行ってこいって言ったら?」

「迷わずに飛び込む」

「単独潜入任務は?」

「危険など顧みない。ビールのためだ」

「踊り子のミノンちゃんと別れろと言ったら?」

 シドは酒場のお姉さんに貢ぎまくって、ついに最近同棲を始めたのだ。

「お前は鬼か! それだけは無理に決まっているだろう!」

「あはは、冗談だって。仕事の後の一杯は最高らしいから、それくらいなら用意するよ」

「ありがてえ。小麦を10キロほど買っていこうな!」

 持ってきた荷車はすぐさま物資の山でいっぱいになった。だけど、ダンジョンへ運ぶのはこれですべてじゃない。まだまだ荷物は増えるのだ。これを六人で運ぶとなると大変なことだけど、僕らには強い味方がいる。それがタンクBK-01である。