「セラ、どうしたの?」

 メリッサは鋭いな、僕の動揺を感じ取ってしまったらしい。

「何でもない。そう言えば黒い刃は地下八階の入り口を探しているんだって? 探索はどうだった?」

 僕は強引に話題を変えてしまった。これは訊きたかったことでもある。

「手がかりも見つかっていない」

「そっかあ、残念だな。下の階層へ行けたら黒晶を集めやすかったかもしれないのにね」

「黒晶を?」

「うん。新しい計画があるんだ。訊きたい?」

 コクコク。

「実は飛空艇を作ろうと思っているんだよ」

 僕はメリッサにシルバーホーク計画を説明した。

「空を飛ぶ……」

「そうすれば自由にいろんなところに行けるからね」

「私も乗せてくれるの?」

「もちろんだよ。僕たちは友だちで、その……婚約者だろう? 保留中だけど……」

「う、うん……」

「シルバーホークが完成したら必ず乗せてあげるからね」

「私も素材集めに行く」

 メリッサが僕の袖を掴んで宣言した。

「一緒に行ってくれるの?」

「行く」

 メリッサが一緒なら戦術に幅が出るな。彼女の戦闘力は僕と同格かそれ以上だ。僕はいろんなことができるけど、戦いの技術だけで言えばメリッサの方が上である。そんな彼女が来てくれるのなら安心していろんなことが任せられるのだ。

「ところで、前から聞きたかったんだけど」

「なに?」

「メリッサの固有ジョブってなに?」

 シドは斥候だし、リタは戦士、ララベルは投擲手で、ミレアはヴァンパイアである。でもメリッサの固有ジョブが何なのかは知らない。

「そ、それは……ないしょ」

「えー、なんで?」

「セラが私と結ばれたら教える……」

 うーん、そこまで隠されると気になるなあ。

「ところで、セラはどんな飛空艇を作るの?」

 今度はメリッサによって強引に話題が変えられた。ジョブについてはよっぽど話したくないようだ。気にはなるけど仕方がないか。

「機体は銀色って決めてあるんだ。たぶんプロペラ機になると思う」

「プロペラって?」

「プロペラっていうのはね……絵をかいて説明するよ」

 僕たちはもう一杯ずつココアを作って、夜遅くまで話し込んでしまった。