ダンジョンに潜ったので帰るころには夜になってしまった。部屋の明かりを点けてぼんやりとしていると、あっという間に時間が過ぎて行ってしまう。だけど、これはどういうことだろう? 何かが物足りなくて、僕はソワソワした気持ちのままなのだ。

 いろいろあったけど無事にエルドラハへ帰ってくることができた。明日からは仲間たちと素材集めだ。菜園も順調で言うことはない。それなのに、こうやって部屋でくつろいでいるのに、落ち着くことができないのだ。

 控えめなノックの音が部屋に響いた。夜も遅いというのに誰かがやってきたようだ。ひょっとして急患が僕を訪ねてきたかな?

「はーい、今開けますよ……」

 外に立っていたのは少し拗ねた顔をしたメリッサだった。

「戻ったんだね……、久しぶり」

「明かりがついていたから寄ってみた」

 メリッサは言葉少なに僕の顔をじっと見つめる。

「さあ、入ってよ。何か温かい飲み物を用意するから」

 砂漠の夜は冷えるのだ。僕はメリッサを招き入れようとしたのだけど、彼女は動かなかった。

「どうしたの?」

「もう帰って来ないかと思った……」

「そんなわけないだろう」

「…………」

 相変わらずほとんど表情は動かないけど、少しだけ怒っているようだ。

「ごめん……心配をかけたんだね」

 メリッサはコクコクと頷く。

「明日帰って来なかったら、飛空艇を乗っ取って探しに行くつもりだった」

 ハイジャック!?

「お、大袈裟だよ……」

「冗談」

「そ、そっか」

 目が本気だったような気がするんだけど……。

「とにかく入って。お土産を買ってきたんだ」

 もう一度入るように促すと、今度はためらうこともなく部屋に入ってくれた。

「はい、気に入ってくれると嬉しいんだけど」