シドの目的はやっぱりそれなのね。

「すげー、アタシは海を見たい! でっかいんだろう? 変な生き物がいっぱいいるんだってな!」

 ララベルの夢だってすぐにかなうはずだ。

 僕はぼんやりとしているリタに声をかけた。

「次にグローサムへ行くときは一緒だよ。街のレストランに繰り出して、みんなで祝杯を上げるんだ」

「うん……、うん! そうだね、なんだか楽しい目標ができちゃったよ」

「となると、これからちょっぴり忙しくなるよ。素材集めをしなくちゃならないからね。特に浮遊装置に使う重力魔法機関には大量の黒晶が必要になってくる。機体には金属を使うからそちらも集めなきゃならないからね」

「任せておけ! 酒と女のためならどんな苦労もいとわないぞ」

「アタシだって」

「それじゃあ、またダンジョンの日々だね」

 僕らはワイワイと騒ぎながら次の日の計画を立てた。

 話が一段落したところで、僕は出かけることにした。

「ちょっと行ってくるよ。メリッサやジャカルタさんにもお土産を渡してくる」

 そう言うと、シドが教えてくれた。

「ジャカルタなら家にいるが、メリッサは出かけているんじゃないか? 数日前に地下七階へ行くと言っていたからな」

「へえ、地下七階か……。どういうつもりだろう?」

 地下七階は野生のゴーレムが多い。ゴーレムは魔結晶を食べて活動するので、実入りは悪いのだ。

「あいつらは地下八階の入り口を探しているのさ」
 ダンジョンは地下十階までというのがもっぱらの噂である。さらなる深層を求めて黒い刃は動き出しているようだ。もっと深い階層まで行けば、魔結晶もたくさん得られるのかな? 僕としても気になるところだ。メリッサが戻ってきたらさっそく話を聞こうと思った。


 ジャカルタさんにお土産の植物図鑑を渡したらとても喜んでくれた。帝都で暑さに強い牧草の種を買ってきたので、そちらも確かめてもらう。グローバーと呼ばれるこの牧草なら湖の周りに定着するだろうという太鼓判も貰うことができた。

 さっそく二人で湖のほとりで種まきだ。

「グローバーは白とピンクの花を咲かせるのですよ」

「それは楽しみですね。この砂漠に花が咲くなんてまるで夢みたいだ」

 ジャカルタさんが農業スキルを使ったから、普通にまくよりはずっと早く生えるだろう。それこそ夢のような話だけど、いつかはここで牧畜がされるかもしれない。

 地下菜園の作物も順調に育っているとのことだったので行ってきた。収穫祭を開かなくちゃならないな。もう少ししたら取り入れだ。