「はぁ~、生き返る……。ずっと我慢していたから美味しさもひとしおだわ。やっぱりセラの血がいちばんね」

「他の人の血は吸わなかった?」

「迷惑をかけるからダメって言ったのはセラじゃない。ちゃぁんと我慢してたわよ。ご褒美にお替りちょうだい♡」

僕の首に腕を絡めて離さないミレアをリタが強引に引き剥がした。

「いつまでくっついているのよ。これじゃあ話もできないでしょう」

「うるさいわねっ、せっかくの余韻が台無しじゃない」

「まあまあ、二人とも落ち着いてよ。みんなにお土産があるんだ」

 お土産を渡すと室内の興奮は最高潮になった。シドはさっそくもらったブランデーをグラスに注いでいる。

「グローサムにはどういう理由で呼ばれたんだよ? いきなりいなくなっちまったからびっくりしちまったぜ」

「約束があるから詳しく話せないんだけど、病人を治してきたんだ」

「そんなことだろうと思ったぜ。それで、グローサムの街はどうだった?」

「面白い街だったよ。人も物もたくさんでさ」

 帝都の様子を聞かせてあげると、リタは目を輝かせていた。

「いいなあ、私も行ってみたかったよ。きっと美味しいものがたくさんあるんだろうね。まあ、セラの料理にはかなわないと思うけど、それでもやっぱり見てみたいじゃない」

 リタは僕と同じでエルドラハ生まれのエルドラハ育ちである。ここより他の場所を見たことがない。

「そうだね、オシャレなカフェや美味しそうなレストランがいっぱいあった。グローサムは海沿いの街だから、山の幸も海の幸もなんでも揃うんだ。港近くの市場に行けば手に入らない食材はないとまで言われているんだよ」

「いいなあ、わたしなんか一生かかっても行けないんだろうなあ……」

 ため息をつくリタに僕は首を振った。

「それがそうでもない」

「どういうこと?」

「僕は帝都へ行くために飛空艇に乗ったでしょう。そのときに飛空艇の構造を解析しておいたんだ」

 みんなは目をぱちくりしているだけで、僕が何を言いたいかわかっていないようだ。

「つまり、材料さえあれば僕たちは自前で空を飛ぶ乗り物が造れるってわけさ」

「ほ、本当なの……?」

 僕は力強く頷いて見せた。

「さすがはセラだ。それに乗れば他所へ酒を買いに行けるな! 都会の夜の街にだって繰り出せるぜ」