砂嵐の影響もあって、帰りの飛空艇は遅れに遅れた。途中で二回も着陸して、結局六日もかかってエルドラハに到着したのだ。

 およそ半月ぶりに戻ってきたエルドラハは少しだけ様子が変わっていた。空の上から見ると、地上のグランダス湖がまた一回り大きくなっている。

 湖畔には雑草がよくしげり、青々とした新芽がまぶしい。デザートフォーミングマシンが順調に頑張ってくれているようだ。人々が楽しそうに遊んだり、水汲みをしたりしている光景を見て僕も嬉しくなってしまった。

 飛空艇が着陸すると、僕は囚人たちと離れてゲートへ向かった。彼らはこれからここでの暮らし方についてオリエンテーションがあるのだけど、僕はエルドラハ生まれの囚人である。そんなものは教えてもらわなくたって嫌ってほど知っているのだ。

《聞け、クズども! 吾輩は本日よりお前たちを受け入れる監獄長のグランダスであーる!》

 今日も監獄長のダミ声は絶好調だな。離れていたらちょっとだけ懐かしかったけど、実際に聞くとやっぱりうるさいや。お土産にのど飴を買ってきたけど、これはあげない方がいいかもしれない。調子に乗って放送回数を増やしそうだ。

「セラ?」

 不意に名前を呼ばれた。見るとゲートのところに懐かしい面々がそろっている。

「やっぱり、セラじゃねーか!」

「セラあ!」

 リタにシド、ララベルもが出迎えに来てくれていたのだ!

「みんな、ただいま!」

「ただいまじゃねーよ! 帰ってくるのが遅いからすっごく心配したんだぞ。こうして飛空艇が来るたびに迎えに来たのに、セラの姿は全然なくて……」

 ララベルは泣き出してしまった。リタの瞳にも涙が溢れている。

「心配をかけてごめんね。すぐにそっちに行くよ!」

 僕は荷物を背負い直して元気に走り出した。


 仲間たちと自宅に帰ってくると、見知った顔が待っていた。

「おかえり、セラ」

「ミレア!」

「日中は外に出られないから、ずっとここでセラが帰ってくるのを待っていたの」

 ヴァンパイアのミレアは僕をぎゅっとハグすると、すかさず首から血を吸った。