魔力を流し込むと、ボロボロだった服が光り輝き、新品のようになってよみがえった。汚れもすっかり分離されて、手に入れたときよりも綺麗なくらいだ。

「すごい……。いててっ!」

 修理の能力に感動していたけど、体の痛みで現実に引き戻される。ピルモアの奴め、遠慮なく蹴りやがって。思わず怪我をした場所に手を当ててしまった。

「ええっ!?」

 傷口に当てた手から自分の体の構造が脳に滑り込んできた。ひょっとして『修理』は……人間の体を治すこともできるのか!? 興奮を抑えながら僕は冷静に体を探っていく。なるほど、この波長の魔力を流し込めば細胞が活性化するわけだな。

「よし、やってみるか!」

 修理を使って僕は自分の傷をすっかり治してしまった。さっきまであった鬱血はどこにもなく、疲れも取れている。まるで治癒魔法や回復魔法を使ったみたいだぞ。よし、これで完璧…………じゃない! 修理の神髄はまだまだこんなもんじゃないようだ。

「まさか……呪いを解除することもできるのか……?」

 長い年月にわたって僕を苦しめてきた重力の呪いだけど、修理を使えば呪いを解くこともできるようだ。まだ魔力は残っている。それなら遠慮する理由はどこにもない。

「魔導錬成師セラ・ノキアの名において命じる。我がスキルをもって、我が肉体よ、あるべき姿に戻れ!」

 僕の体から黒い煙が揺らめきながら立ち上っている。これが体を蝕んでいた呪いの正体か。魔力を全身に巡らせてすべての煙を体から追い出した。

「うわあ、体が軽い! うおっと!?」

 体が軽すぎて足元がおぼつかない。転んでしまいそうなくらいフワフワしているので、慎重にゆっくりと歩くことにしよう。ここから逃げ出すにしても、まずはこの状態に慣れないとね。そう言えば、さっきから外が騒がしいな。ピルモアは僕を置いて出発したと思ったけど、まだ通路にいるのだろうか?



      ◇



 扉を開けるとツンとした臭いのする煙が室内に流れ込んできた。これは目くらましの煙幕? つまり魔物が出現したということか! 通路には煙と血の匂いが充満している。

「しっかりして!」