「こんな時間にごめんね。セラがお姉さまに捕まったと聞いて大急ぎでやってきたのよ。はい、これ」

 エリシモさんが渡してくれたのは僕の荷物だ。中には仲間へのお土産や、自分の買い物などが入っている。お、大切なメモ帳もあるぞ。

「ありがとうございます。でもどうしてこれを?」

「セラ、私と一緒に逃げましょう。私の領地へ行けばお姉さまといえども手は出せません。しばらく匿ってあげるから、そこで暮らしましょう」

「お申し出はありがたいのですが、僕はエルドラハに帰りたいんです」

 エリシモさんの領地へ行くのなら、ここで捕まっているのとそう大差はない。

「どうして? 私と暮らすのはいや?」

「そうじゃなくて、僕はエルドラハでやりたいことがありますし、あそこでは仲間が待っています」

 エリシモさんは怖い顔で僕を見つめた。だけど、彼女は姉のパミューのようにわがままではなかった。

「わかったわ。貴方は恩人ですもの。願いをかなえて差し上げないとね。寂しいけどあなたを家に帰してあげます。私についてきて」

「どうするんですか?」

「明け方に出立する飛空艇があります。その便に貴方を紛れ込ませるの」

 おお、これでついに帰れるぞ!

「でも、そんなことをして大丈夫ですか? エリシモさんが罪に問われることはありませんか?」

「私は囚人をエルドラハへ戻すだけよ。これが罪になるかしら?」

 たぶんならないな。

「でも、パミューさんが怒りませんか?」

「怒ると思うけど平気よ。姉のことは私が宥めるから安心して。セラをもう一度連行なんてさせないから。これでも私は古代文明研究の権威なの。宮廷でも発言権は強いわ」

 それなら安心か。

「さあ、行きましょう」

 僕たちはエリシモさん配下の騎士たちに守られて飛空艇の発着場まで移動した。途中何度か検問があったけど、そこにいるのが第二皇女だとわかるとすぐに通してくれた。まさにフリーパスである。心配していたパミューさんの追手も現れず、すんなりと発着場まで行くことができた。

 飛空艇ではまさに囚人たちが護送されている最中だった。みんな暗い顔をして、後部ハッチから檻の中へと乗り込んでいる。嬉しそうに飛空艇に乗るのは僕くらいのものだ。

「しまったわ」

 突然エリシモさんが声を上げた。