「料理」のスキルがあるのでレシピには困らない。調子に乗ってたくさん作ってしまったけど、一つ一つの量は少なめにしておいた。

「ほお、いい香りだ」

 二種のポタージュを出すと、パミューさんは優雅な手つきで銀のスプーンを取り上げた。

「さ、先に私がお毒見を……」

 エイミアさんがいそいそと前に出てくる。毒見でそんなにワクワクした顔をするのはどうかと思うよ。この人はつくづくスパイには向いていないと思う。

 毒見をしたエイミアさんも、その後で食べたパミューさんも、二人とも蕩けそうな顔をしていた。ちなみに二品目からの毒見はパミューさんによって必要ないとされた。

「セラが私に毒を盛ることもないであろう。エイミア下がっておれ」

「は、はい……クッ……」

 毒見ができなくて肩を落としているエイミアさんはかわいそうだった。あとでデザートでも分けてあげようかな?



 エリシモさんの治療も三日目である。寝室へいくと、エリシモさんは優しい笑顔で迎えてくれた。その頭には僕がプレゼントした髪留めが輝いている。

「あ、さっそくつけてくれたんですね」

「ええ、私のお気に入りですわ。調べてみたのですが、これは1200年前に栄えたウンダル族の意匠によく似てるの」
 エリシモさんの膝には大きな本が乗せられていた。

「また調べ物をして。治療は終わっていないんですよ」

「数ページめくってみただけよ。そんなに叱らないで」

 本当に本が好きなんだなあ。

「今日で治療は終わりますからね。そうしたら研究も再開できます。もうちょっとだけ我慢しましょう」

「ええ、楽しみだわ。体が治ったら南のテクノカ遺跡へ行ってみたいの。きっと新しい発見があるはずよ。そうだ、セラも一緒に行かない? きっと楽しいわよ」