「それから酒屋さんや文房具店、食料品や雑貨を扱う店なんかにも行きたいです!」

 お酒はシドへのお土産、文房具はメリッサ、食料はリタで、雑貨はララベルのためだ。ミレアには何を買っていこう? おしゃれだからブティックで服とかがいいかな? あんまりかさばるものは困るけど。

「おいおい、ずいぶんと多いではないか」

 パミューさんは難しい顔をしながらも、馬車を急がせてくれた。


 今日は本当にいい買い物ができたと思う。シドにはブランデーの逸品を手に入れたし、メリッサが欲しがっていたガラスペンを手に入れることもできた。リタのためには大きなハムの塊や、薔薇の形をした砂糖菓子なんてものも手に入れている。ララベルにはかわいいリストバンドを購入した。ミレアには絹のスカーフを買ったけど喜んでもらえるかな?

 それから、露店で不思議なものを見つけた。特殊な合金でできた髪飾りだ。形はシンプルなのに、妙に引き付けられてしまったのだ。不思議に思ってスキャンをかけて見たら、それは何と古代文明の遺物だった。

 この品がどういう経緯で露店に流れ着いたのかはわからないけど、千年以上前に作られたものに間違いはない。特殊な金属なので錆も浮かず、古いものには見えないから、誰もその価値がわからないのだな。

 魔法的な効果などはないけど、珍しいものには違いない。これはエリシモさんへのお見舞いの品にした。

 それにしても驚いたのは帝都の物価の安さだ。物価が安いというか魔結晶がやたらと高値で取引されているのだ。

 たとえばエルドラハで生きた鶏を買おうと思ったら、赤晶で5㎏はするだろう。ところが、グローサムではその十分の一の量で買えてしまうのだ。いかに僕たちが帝国に搾取されているかがよくわかった。

「さて、セラ。昼をだいぶ過ぎてしまったぞ。そろそろ宮廷に戻ろうではないか」

「いろいろと回っていただきありがとうございました。お約束通り腕を振るいますよ」

 目の前にいるのは僕らから搾取する帝国のお姫様だ。含むところがないと言えば嘘になるけど、今日世話になったのは事実だ。それにエリシモさんはいい人でもある。料理はしっかりと作ることにした。


 ディナーは約束通り、正餐のフルコースにした。メニューはこんな感じだ。

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・雷鳥のポタージュとマッシュルームのポタージュの二種
・フォアグラのソテー ワインのグラニテ添え
・手長海老とコンソメのジュレ
・キジの卵とプレスしたキャビアクリーム
・ヤツメウナギのパイ包み
・スパークリングワインとレモンのシャーベット(お口直し)
・スズキのアーモンドバターソース
・豚の足 アントン・メリノ風
(アントン・メリノはグランベル王国を代表する料理人)
・ダルティアの腰肉 
 ポルトガソースとカンバーランドソース添え
・プチ・ゴーフレット
・タルトタタンのアイスクリーム添え

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