すぐそうやって脅迫するのがこの人の悪いところだ。

「そんなこと言われても、あれは大量に魔力を使うし、気分が乗らないと上手に作れないんですよねえ。街に遊びに行けたら楽しく料理が作れるかもしれないけど……」

「なんだと。貴様、甘い顔をしていればつけあがりおって」

「まあまあ、そう言わずに遊びに行かせてくださいよ。そうしたら今夜は最高のディナーをご用意しますから」

 僕はにっこり笑って提案してみた。

「最高のディナーだと?」

「ええ。僕の持てる技をすべて使ったスペシャルコースです。ねっ!」

「くそ、無邪気な顔で笑いおって、これでは怒るに怒れんではないか」

「それじゃあ……」

 パミューさんは肩をすくめる。

「仕方がない、私が直々に案内してやろう。エイミア、用意をいたせ」

「はっ、直ちに関係各所に通達を出します!」

 エイミアさんは敬礼をして行ってしまった。メイドさんが敬礼をしちゃダメなんじゃないかな? 正体がバレバレだよ。

 それにしても、大袈裟なことになりそうだから第一皇女様にはついて来てほしくないなあ。でも、とても言い出せる感じでもない。いつもおっかない顔をしているパミューさんが機嫌良さそうに案内してくれるというのだ。ここはありがたく申し出を受けるとするか。

「グローサムの名所を案内してやるから、しっかりとディナーを用意するのだぞ」

「心を込めて作りますよ」

「ならばよい」

 僕らは馬車の待つ玄関へと移動した。



 久しぶりに見る圧倒的な物量に僕は絶句していた。人に物、この都にはありとあらゆるものが詰め込まれている。帝国の紋章をつけた高級馬車は、僕らを乗せて大通りの真ん中をどんどんと進んでいく。

「セラはどんなところに行きたいのだ?」

「まずは魔道具の店を見たいです」

 エルドラハで出回る魔道具の数は限られている。それに比べてグローサムなら大量の品ぞろえだろうし、僕が見たこともないアイテムだってあるかもしれない。冒険や暮らしに役立つものなら買って帰りたい。たとえ買えなくても、手に取って構造を調べれば自分で作り出せるかもしれないからね。

「それでは皇室御用達の店へ連れて行ってやろう」