僕は鉄格子に取りつき「解体」でロックを外した。この程度じゃ一秒も必要ない。トラップ付きの宝箱や扉を相手に日々頑張っているのだ。ダンジョンで鍛えている僕にはこれくらいは朝飯前である。ジャム付きのパンをくわえながら、僕も甲板へと飛び出した。


 甲板では十人もの帝国兵が攻撃魔法を展開しているところだった。先ほど朝食を届けてくれた兵士が立っていたので声をかけてみる。

「いつもこんな風にワイバーンの襲撃があるんですか?」

「魔物に襲われるなんて滅多にねえよ。って、おまっ、どうやって牢から出てきたんだ!?」

 慌てふためく兵士を無視してワイバーンとの距離を見る。奴らは口から火球を放つことができるのだ。今は魔法攻撃の弾幕のおかげで接近を許していないけど、遠からず魔法兵の魔力は尽きる。ワイバーンもそのタイミングを狙っているに違いない。

「おじさん、槍を借りるよ」

 兵士の持っていた槍をひったくった。

「おい、何をする!」

 バックステップで後ろに飛んで、助走をつけてからの投擲だ。専門職のララベルほどじゃないけど、パワーなら僕だって負けないぞ。

「うりゃっ!」

 槍は空気を切り裂く光線のように閃き、ワイバーンの首を貫いた。だがそれで終わったわけじゃない。首を貫通した槍は勢いを失わず、後ろを飛んでいたもう一匹のワイバーンの腹までをも貫く。即死だったみたいで、二体のワイバーンは地上へと落ちていった。

「あんたは一体……」

 兵士たちが驚愕の目で僕を見つめる。

「油断しちゃダメですよ。もう一体残っているんですから」

「そ、そうだった!」

 最後のワイバーンがこちらに向かって近づいてくる。好戦的で有名なだけはある。仲間がやられても戦意を失わないようだ。

「おい、セラ・ノキア。残りの一体も片付けろ!」

 僕を連れてきた偉そうな帝国の使者が青い顔で命令してきた。

「あ、プレッツェルさん、いたんだ」

「プラッツェルだ!」

 そんなことはどうでもいい。僕だって飛空艇を落とされるのは嫌だから、手伝ってあげてもいいけど、いいかげんこの人の態度は鼻につく。

「待遇の改善を要求する」

「な、なんだと? この緊急時に何を言っとるか!」

「嫌なら別にいいです。僕は砂漠に慣れていますので、飛空艇が墜落してもどうにかできますから」