「まあいいさ。空を飛ぶのは初めてだからね」
独り言でカラ元気を絞り出した。じっさいのところ前世でも飛行機に乗った経験はない。やがて船内に重低音が響き渡り、浮遊装置が起動しだす。いよいよ出航のようだ。僕はそれまでの暗い気持ちを忘れて窓に駆け寄った。
船体を軋ませながら飛空艇がふわりと浮かび上がった。おへそに下の辺りがむずむずとする浮遊感を感じる。
「おおっ!」
思わず感動のため息が漏れた。ついに僕も重力のくびきから逃れる日がきたのだ。プロペラが回りだして飛空艇はゆっくりと全身を始める。窓から見えるエルドラハが少しずつ小さくなっていくぞ。メリッサや仲間の姿がみえるかな? しばらくは窓の外の風景に釘付けだった。
出発時は異様に興奮していた僕だっが、飛空艇からの景色もすぐに飽きてしまった。だって見渡す限り砂しかないんだもん。飛空艇は高高度を飛べるような代物ではない。高さはせいぜい300mくらいまで。時速も60~90㎞が限界のようだ。だからいつまでたっても同じ景色なのである。
「そろそろ始めようかな……」
繰り返し再生されるGIF画像のような船窓から離れ、僕はその場にぺたりと座って床に手を伸ばした。そして「スキャン」によって飛空艇の構造を調べていく。
これまでも飛空艇を調べたいと願ってきた。だけど密航の恐れがある囚人は飛空艇に近づくことさえ許されない。今日は図らずも飛空艇に乗れたのだから、存分に「スキャン」をかけるつもりだ。
浮遊装置や推進装置の構造さえわかれば、「作製」によって自前で飛空艇を作れるようになるだろう。そうすれば、僕らはさらに自由になる。
本当は構造をすべて書き写していけばいいのだけど、あいにく急遽連れ出されたのでメモ用紙を持ってきていなかった。これが地球の飛行機なら親切なCAさんが紙とペンを貸してくれただろう。でも、エブラダ帝国エアラインでは、呼んでも来るのは質の悪い兵隊さんだけである。
大事な部分は暗記するしかないか……。対象が大きいのでスキャンにかかる時間は長くなりそうだ。僕は文字通りどっしりと腰を据えて飛空艇の解析に取り組んだ。
夕方になって食事が運ばれてきた。意外なことに出されたものは普通な感じだ。一般の兵士が食べる物と大差ない。パンと豆入りのシチュー、固いチーズのかけら、水といった内容である。美味しくはなかったけど、量だけはあった。それでも普通の囚人より待遇はいいようだ。だったら調子に乗ってお願いしてみようかな?
独り言でカラ元気を絞り出した。じっさいのところ前世でも飛行機に乗った経験はない。やがて船内に重低音が響き渡り、浮遊装置が起動しだす。いよいよ出航のようだ。僕はそれまでの暗い気持ちを忘れて窓に駆け寄った。
船体を軋ませながら飛空艇がふわりと浮かび上がった。おへそに下の辺りがむずむずとする浮遊感を感じる。
「おおっ!」
思わず感動のため息が漏れた。ついに僕も重力のくびきから逃れる日がきたのだ。プロペラが回りだして飛空艇はゆっくりと全身を始める。窓から見えるエルドラハが少しずつ小さくなっていくぞ。メリッサや仲間の姿がみえるかな? しばらくは窓の外の風景に釘付けだった。
出発時は異様に興奮していた僕だっが、飛空艇からの景色もすぐに飽きてしまった。だって見渡す限り砂しかないんだもん。飛空艇は高高度を飛べるような代物ではない。高さはせいぜい300mくらいまで。時速も60~90㎞が限界のようだ。だからいつまでたっても同じ景色なのである。
「そろそろ始めようかな……」
繰り返し再生されるGIF画像のような船窓から離れ、僕はその場にぺたりと座って床に手を伸ばした。そして「スキャン」によって飛空艇の構造を調べていく。
これまでも飛空艇を調べたいと願ってきた。だけど密航の恐れがある囚人は飛空艇に近づくことさえ許されない。今日は図らずも飛空艇に乗れたのだから、存分に「スキャン」をかけるつもりだ。
浮遊装置や推進装置の構造さえわかれば、「作製」によって自前で飛空艇を作れるようになるだろう。そうすれば、僕らはさらに自由になる。
本当は構造をすべて書き写していけばいいのだけど、あいにく急遽連れ出されたのでメモ用紙を持ってきていなかった。これが地球の飛行機なら親切なCAさんが紙とペンを貸してくれただろう。でも、エブラダ帝国エアラインでは、呼んでも来るのは質の悪い兵隊さんだけである。
大事な部分は暗記するしかないか……。対象が大きいのでスキャンにかかる時間は長くなりそうだ。僕は文字通りどっしりと腰を据えて飛空艇の解析に取り組んだ。
夕方になって食事が運ばれてきた。意外なことに出されたものは普通な感じだ。一般の兵士が食べる物と大差ない。パンと豆入りのシチュー、固いチーズのかけら、水といった内容である。美味しくはなかったけど、量だけはあった。それでも普通の囚人より待遇はいいようだ。だったら調子に乗ってお願いしてみようかな?