「うわっぷっ!」

 リタは笑いながらまた僕の顔に水をかけた。彼女なりの優しさなんだと思う。僕もそれ以上考えるのを止めて、水の中で思いっきりはしゃいだ。砂漠にできた湖は美しかった。名前以外は完ぺきだった。



 数日が経って、迷宮に向かう僕の耳に監獄長の放送が聞こえてきた。

「聞け! ……じゃなかった。あ~……セラ・ノキア君、この放送を聞いたら至急監獄長のところまで来てください。繰り返します。セラ・ノキア君、この放送を聞いたら至急監獄長のところまで来てください」

 セラ・ノキア君? 普段があれだから、こんな呼び方をされるとちょっとキモい……。でも何だろう? 大切な用事があるようだ。まさか、先日の仕返しかな? 行こうかどうしようか迷っていたら、通りの向こうからララベルが走ってきた。

「おーい、セラ!」

「やあ、ララベル。聞いたと思うけど、監獄長から呼び出しを食らっちゃった。今日の採取は中止かな」

「それなんだけどさ、大変なんだよ」

「どうしたの?」

「今朝着いた飛空艇に帝国からの使者が乗っていたんだ。それでその使者がセラに会いたいんだって」

 ひょっとして、地下のデザートフォーミングマシンを動かしたのがバレたのかな? だとしたらまずいけど、僕が動かしたという証拠はどこにもない。たとえ責められても知らんぷりを貫こう。

「帝国の使者は僕に何の用かな?」

「なんでもセラに帝都まで来てほしいらしいぞ」

「ええっ!?」

 思わぬところで夢がかないそうだけど、これは大丈夫なのだろうか? 不安を抱きつつも僕は監獄長の館に急いだ。