「採取率が下がると困るんだよ。小僧、ララベルのことがあるからおおめに見ているんだ。あんまりつけあがると痛い目に遭わせるぞ」

「水に入るくらいどうってことないでしょう?」

「てめえ……、どうあっても俺に楯突きたいようだな。狙いはララベルか?」

 なんでそうなる!?

「ちがいますけど」

「いい度胸だ。娘を奪うために拳で語り合いたいと、こういうわけか」

 監獄長は熱中症かな? 言語を理解しなくなったぞ。

「セラ、アタシのために親父と戦うんだね……」

 患者が増えた。ララベルも早く水に入った方がいいな。

「だから違うって!」

「いいだろう、お前が俺に勝ったら好きにしろ」

「つまり、みんなが好きに水浴びをしていいということですね」

「水でもララベルでも好きにしやがれっ!」

「ララベルは関係ないです」

「これ以上の言葉は要らねえ!」

 お前は政権与党か? 議論がしつくされたとは思えません! だけど監獄長は本気だった。砂を蹴って三メートルの巨体が僕に襲い掛かる。体重を乗せて放たれた打ち下ろしの右ストレートを僕はあえて受け止めた。

「なん……だと……」

 僕の左手によって止められた拳はピクリとも動かない。

「水浴びは自由にやらせてもらいますよ」

 監獄長の腕を取って懐に入り、ひねりながら背中越しに巨体を投げる。監獄長はしぶきを上げて水の中へ落下し、周囲に歓声が上がった。

「これで水浴びができますよ!」

 人々は服のまま水に入り、初めて水に浸かる感覚に声を上げている。

「僕らも入ろうよ」

 デザートホークスの仲間を促して僕も水に飛び込んだ。

「冷たーい!」

 リタがはしゃぎながら水をかけてくる。シドは背中で浮かびながらうっとりと目を閉じた。ララベルはなんだかモジモジしている。みんなが嬉しそうに水浴びを楽しんでいた。

 これで良かったんだ。

 そう実感できた。飛空艇を諦めた結果がこれなら、そう悪くない選択をしたのだと思う。帝都には行けなくなってしまったけど、考えてみれば僕はまだ十三歳だ。人生は長い。エルドラハを出て外の世界を見るチャンスはいつかやってくると思う。

「リタはこれで良かったと思う?」

 一緒にここを出たがっていたリタに確かめてみた。

「わかんない。でも、セラが一緒だと退屈するってことがなくなったわ」