「聞け、クズども。またもや魔結晶の採取率が下がっている! 水浴びなんぞにうつつを抜かしているせいだ。本日よりグランダス湖で水浴びをすることを禁じる!」

 デザートフォーミングマシンのおかげでエルドラハに湖ができたようだ。しかも監獄長は自分の名前を勝手につけている!? まあ、名前にはこだわらないから何でもいいけどね。

「あら、湖なんてステキね。お姉さんの水着姿を披露しちゃおうかしら?」

 サングラスに白いマントで全身を覆い、頭には大きな帽子を乗せたミレアが調子づいている。すべて僕が作った紫外線をカットするための服だ。これがなければヴァンパイは秒で燃える。

「死んでもしらないよ。僕が作った日焼け止めはそこまで完璧じゃないんだからね」

「うっ……、水着姿は月夜の晩までとっておきますか……」

「だったらアタシと泳ごうよ!」

 ララベルが元気に誘ってきた。

「さっきの放送を聞いただろう。親父さんに叱られるんじゃないのか?」

「ケッ、親父なんて関係ないよ!」

 反抗期だなあ。でも、久しぶりの地上は本当に暑い。白熱した太陽はじりじりと肌を焼き付けて、ミレアじゃなくても火傷してしまいそうだ。

「そうだよなあ、監獄長は横暴すぎるよ。湖はみんなのものなのに。……よし、泳ぎに行こうか!」

 僕らは荷物を置いてグランダス湖に向かった。



 湖に近づくにつれ人々の喧騒が大きくなってきた。思ったよりも大勢が湖に来ているようだ。みんな監獄長の言うことなんてまともに聞く気はないのだろう。冷たい水辺があるのなら、そこで休みたいというのは本能だ。休息をとってから採取に行った方が作業効率だって上がるだろう。

 だけど様子がちょっとおかしい。骨休めというにはうるさすぎた。水の畔ではなにやら言い争いが起きているようだ。どうやら湖に遊びに来た住人と監獄長の手下がいざこざを起こしているようだった。

「少しくらいいいじゃないか。こちとら水遊びなんて生まれて初めてなんだっ!」

 一人が声を上げると、周りの人間がそうだそうだと同調する。それに対して監獄長側は横柄だ。

「湖に入るのはまかりならん。これは監獄長の命令だ。さっさと迷宮で魔結晶をとってこい!」

「少しくらい休んだっていいじゃないか。俺は迷宮から戻ってきたばかりだぞ!」

「何の権利があって湖を閉鎖するんだ!」