十二闘神とタロスを倒した僕らは、ついに聖杯を手に入れた。聖杯は優勝トロフィーみたいな形をしていて、カップの直径は五〇センチにもなる。すべてが高純度の金晶でできていたので、一人で持ち上げることさえ難しいくらいに重たい。僕は一トンのレッドボアでさえ担げるのにだ。

「タロス、斧、槌、盾、は協力して聖杯を持ち上げて」

 タロスたちに手伝わせて聖杯をデザートフォーミングマシンの部屋まで運び、所定の位置にセットした。

「よし、あとは装置を動かすだけだ。メリッサ、お願い」

「うん……」

 メリッサが大きなレバーを引くとデザートフォーミングマシンは低い唸りを上げて動き始めた。床に散らばる砂が振動で飛び跳ねている。コントロールパネルに光が灯り、地下水が少しずつ汲み上げられている様子が映し出された。地上に水が届くまではあと三日かかるようだ。

「メリッサたちは先に戻っていてよ」

「セラは?」

「ゴーレムたちの修理と改造をしていくよ。デザートフォーミングマシンを守らせるんだ」

 十二闘神とタロスは念入りに『修理』と『改造』施しここを守ってもらう予定だ。デザートフォーミングマシンを起動したことによって魔結晶の採取率が下がるので、帝国がちょっかいを出してくるかもしれない。

「わかった。先に戻っている。予定通りデザートフォーミングマシンのことはとぼけておく」

 僕らは自分たちがデザートフォーミングマシンを起動したことを宣伝しないことにした。帝国と表立って衝突したくはないからね。デザートフォーミングマシンと僕らは無関係、そういうことにしておくのだ。

「そのためにも守護者(ガーディアン)は必要でしょう? 僕は壊れたゴーレムも全部直してから地上に帰るよ」

 十二闘神の装備を僕が改造すれば更なるパワーアップもはかれるだろう。そうすれば帝国だってそうそう手は出せない。そもそもエルドラハと帝国本土の間には広大な砂漠が横たわっている。大軍を送ってくるのは不可能だから、守るのはたやすい。対馬海峡の幅は二〇〇キロくらいだったかな? おかげで近代まで日本は他国に支配されることがなかった。それと同じことだ。



       ◇



 一週間後、地上に戻った僕らを監獄長の放送が出迎えた。