まだ薙刀、輪、槌の闘神が残っていたけど仲間たちの士気は大いに上がった。ここを制圧するのも時間の問題だろう。でも、タロスも十二闘神も強かったな。あれだけいた味方ゴーレムだけど、まともに動けるのは二〇%も残っていない。すべて闘神たちに倒されてしまったのだ。デザートホークスと黒い刃だけで挑んでいたら被害はとても大きくなっていただろう。

「ミレア! ミレア、どこにいるの!?」

 僕は吹き飛ばされたミレアを探した。

「セ……ラ……」

 がれきの下から微かな声が聞こえる。崩れた壁の下敷きになっているようだ。岩をどけていくと血まみれのミレアが見つかった。

「恥ずか……しいから、あんまり……見ないで……」

 ミレアの左腕から下がなくなっていたし、お腹は破裂して内臓が飛び出していた。

「すぐに『修理』するからね」

 僕はお腹に手を当ててスキルを展開する。

「セラ……」

 かすれる声でミレアが僕を呼んだ。ほとんど聞き取れないほどその声は小さい。僕は『修理』をしながらミレアの口元に耳を近づける。

「どうしたの?」

「お願い……セラの血をちょうだい。くれたらもう死んでもいい……」

「バカ、生きるために吸うんだろう?」

「そう……だったわね……」

 僕はさっと周囲を見回した。戦闘はまだ続いていて、こちらに注目している人はいない。

「いいよ」

「えっ……?」

「そのまま首を噛める?」

「………………大好き……」

 チクリとした痛みが首筋から伝わった。でも、次の瞬間には寒気と快感が入り混じったような感覚で血が吸われていく。修理をかけている僕にはよくわかる。ミレアの体がびっくりするくらいのスピードで回復していた。

「やっぱりセラの血は特別ね。こんなに力が湧いてくるなんて初めてよ」

 ミレアは赤い舌で唇を舐めながら笑った。

「うん……」

 ミレアの顔が妖艶でぼくはドギマギしてしまう。

「また吸わせてね」

「必要があったらね。……もう行かなきゃ」

 僕は残党を制圧するために立ち上がった。でも本当はここにいるのが気まずかったという理由の方が大きい。だって、血を吸われたときの快感はなんだかエッチで、恥ずかしくなってしまったからだ。ミレアの顔をまともに見ることもできず、僕はごにょごにょと別れを告げて走り出した。



       ◇