タロスは戦闘神の頂点に君臨するだけあって強かった。武器を持たないのに他の闘神を上回る強さを持っているのだ。剣の闘神の攻撃をかわし、神速の踏み込みでステップインすると見えない速度のショートアッパーが鋼のゴーレムの巨体を浮かせていた。同時に後ろ蹴りが杖の闘神の胸を突く。

「なんて動きなんだっ!? スキを突く暇もねえっ!」

 マテリアルクロスボウで狙いを定めているシドが右往左往している。それを守るリタも固唾を飲んで闘神たちの戦いの成り行きを見守っていた。

「無理をしないで。決定的チャンスは必ずやってくる。それを見逃さないように注意していてね!」

 剣の闘神が動かなくなってしまったので僕が代わりに包囲陣に参加した。唸りを上げて襲い掛かる拳や蹴りを何とか受け流して隙を探る。防御に徹していればギリギリながら攻撃は捌けるのだ。

 タロスの放ったローキックを横に受け流した。その瞬間にわずかだがタロスの重心がぶれる。すかさず三体の闘神が攻撃を仕掛けると、タロスの神経は周囲の闘神に向けられた。頭上を飛ぶミレアには気が付いていないようだ。

「!」

 ミレアは無言で剣を構えたまま急降下する。だけど、タロスはその攻撃にさえ反応してしまう。天高く振り上げられた足がミレアを直撃した。ミレアは大きく弾かれて広間の壁に激突する。タロスの足はそのままかかと落としの形となって槍の闘神の頭を砕いた。

 一瞬にして二人の仲間がやられたのだが、さすがに大きな隙ができた。僕はタロスの背中に飛びつき首に足を絡めた。そうやって落ちないようにして両手にはめた雷撃のナックルをタロスのこめかみめがけて振り下ろす。バチバチと唸る雷撃にタロスが立ち尽くすと、シドやリタの攻撃がこれに加わった。

 三〇秒ほどの時間が流れ、エネルギー源の魔結晶がなくなり、雷撃がやむと辺りが静かになっていた。タロスは立ったまま動かなくなっていた。

「タロスを討ち取ったぞ! 僕らの勝利はほぼ確定だ。一気に押し込めっ!」