「ぐわはははははははっ、若君! これは中々壮観な図でございますなあ!」

 迷宮の壁にキャブルさんの大声が響いている。魔物の襲来を警戒して声を落とす必要はもうない。なぜなら、この区域のゴーレムは全部捕まえてしまったからだ。いま、僕らの目の前に並んでいるのは一五〇体を越えるゴーレムの軍勢である。

 タンク型やポピュラーナイト、人型に鳥型なんていうのもいる。全部僕らで捕まえて、修理と改造を施した。今では僕らの忠実なしもべになっている。

「ゴーレムの指揮はタナトスさんにお願いします」

「承知しました」

 タナトスさんは元近衛騎士団長だから集団戦に長けている。ゴーレム部隊と他のみんなが十二闘神と戦っている隙をついて、僕、メリッサ、ミレアが弱点である雷撃攻撃をするのだ。

 なんでこの三人が遊撃隊かと言えば戦闘力が高いから。僕はAプラス(地下七階にきて上がっていた)、メリッサもAプラス、ミレアもAマイナスだ。決戦前に正直に打ち明けて強さを見せてもらったのだ。

「そんなに遠慮することないのよ。セラだったら裸だって見せてあげるんだから」

 ミレアが冗談とも本気ともつかないことを言って僕を困らせる。

「それでは出発しましょう。みなさん、聖杯を手に入れますよ!」

「おう!!」

 人々のときの声が僕の背中を押してくれた。



       ◇



 突入前にシドと二人で偵察に出かけた。メリッサから詳細は聞いていたけど、自分の目で内部の様子を確かめておきたかったのだ。聖杯の間は神殿のような作りで静まり返っている。内部は学校の体育館ほどの広さで、壁の両側に六体ずつゴーレムが等間隔で立っていた。今は石像のように動かないけど、部屋に侵入者があれば全力で排除しようとするそうだ。

 奥の方に高い場所があり、そこにこの広間の主であるタロスが座っている。すぐ横の台座の上には巨大な金の聖杯が輝いていた。

「ありゃあ高純度の金晶だぜ。あんな大きなのは見たことがない」

 聖杯に目を止めたシドが囁いた。僕は手前のゴーレムを調べる。



 スキル『スキャン』発動。

 対象:杖の闘神 全長三メートル八四センチ

 杖術のマスター

 絶縁体コーティングされており、他のゴーレムに比べ電撃攻撃が効きにくい。

 戦闘力判定:A