命令を聞かせることができるかどうかはわからない。でも、人間への攻撃性を書き換えれば何とかなるのかな……。

「自律回路をいじることができればあるいはね……」

「それってつまり、セラが迷宮の覇者になれるってことじゃない?」

「そ、そうなのかな?」

「そうに決まっているじゃない。そして、それは……」

「それは?」

「私が迷宮の女王になるってことを意味しているわ!」

「なんでそうなるのよっ!」

 僕の代わりにリタがツッコんでくれた。覇者うんぬんはともかく、ゴーレムたちを配下にできれば迷宮の探索はずっと楽になるはずだ。というよりも、魔結晶の採取をゴーレムに任せてしまえば人間への被害はずっと少なくなるだろう。この先、迷宮で命を落とす人はいなくなるかもしれない……。

「ちょっと試してみようか?」

「だったらいいゴーレムがいるわよ」

 僕らはミレアの案内でさらなる奥地に進んだ。



   ◇



 物陰からそっと頭を出すと四体のゴーレムが巡回している様子がよく見えた。

「あれよ。なかなか使えそうでしょう?」

 ミレアが教えてくれたのは騎士のゴーレムだ。騎士のゴーレムと言っても馬型に人型のゴーレムが乗っているわけではない。ケンタウロスのように下半身が馬で首から上が人の姿をしている。人間部分は甲冑でできていていかにも強そうだ。長い槍を持っていた。

「どう、改造できそう?」

「遠すぎてスキャンが使えないな。もう少し寄ってみるからみんなはここで待っていて」

 タンクを改造したときにわかったのだけど、ゴーレムは人感センサーを搭載していた。赤外線や音波、可視光などを利用しているので、ターンヘルムで姿を消しても気が付かれるだろう。でも三六〇度すべてが見えているわけじゃない。死角はどこかにあるはずなのだ。僕は天井に張り付いてゴーレム騎士の後ろからそっと近づいた。




 『スキャン』発動

 対象:ポピュラーナイト 人馬一体型のゴーレム。移動速度は最大で時速四〇キロにもなる。

 得意技:槍による直接攻撃 弱点:頭部への電撃

 戦闘力判定:Bプラス