チームの固定メンバーはピルモアの言葉に納得しているようで、よく考えもせずにウンウンと頷いている。揃いも揃って現実を認識できない奴らが集まったものだ。だけどリタが反対意見を言った。

「私はいやだよ。セラの言う通りさ。今の戦力で太刀打ちできるほど地下四階の魔物は甘くない」

「なんだ、リタまでビビっているのか? 安心しろ、お前のことは俺が守ってやるからよ」

 すかさず周囲の男たちが囃し立てた。

「ヒューヒュー! ピルモアがサラッと告白してるぜ!」

「俺たちの実力だって上がってきているんだ。地下三階も怖くない」

「そうさ、これだけのメンバーがそろっていれば問題ないぞ」

 僕に言わせれば問題だらけだ。地下四階に行くには準備と経験が必要である。僕も強力なチームのポーターとして数回潜ったことがあるけど、魔物の強さが段違いなのだ。ピルモア程度がリーダーでは全滅の恐れだってある。リタもそのことはよくわかっているようだ。

「アンタと心中なんて絶対いやだからね。このまま地下三階を探索すべきだと思う」

「強情な女だぜ……。だったら一人で戻れよ。他の奴らも同じだぜ。帰りたければ勝手に帰れ!」

 そう言われてしまうと、リタも僕も何も言い返せなかった。いくらリタが強くたって、一人で地上に戻れるほど迷宮は甘くない。ましてや、ジョブもスキルもない僕には無理な話なのだ。ぬぐい切れない不安はあったけど、僕もリタも地下四階への階段を降りるしかなかった。



 地下四階は宝の山だった。入ってすぐに珍しい黄晶や緑晶をいくつも見つけたくらいだ。黄晶は地の魔力を、緑晶は風の魔力を含んでいて、魔法薬や魔道具作りには欠かせない魔結晶だ。

「幸先がいいぜ。これなら黒晶や白晶だって見つかるかもしれないぞ」

「いやいや、ひょっとしたら金晶や銀晶だってあるかもしれやせんぜ!」

「そいつはいい!」

 ピルモアたちがはしゃげばはしゃぐほど僕の不安は大きくなった。

 黄晶と緑晶の採取を終えるといったん休憩することになった。適当な小部屋に入り、入り口を封鎖すれば簡易の安全地帯ができあがる。地下三階に下りてから戦闘はなかったけど、ずっと緊張の連続でピルモアたちも疲れたようだ。それに地下深くに来たせいで迷宮内の気温も下がり、今は夜のように冷えている。