「ゴーレム系よ。やたらと装甲が硬くて、攻撃も強力なの。なるべく戦闘は避けることをお勧めするわ」

 楽観的なミレアでさえ恐れるほど手強いのか……。ゴーレムと言えばストーンゴーレムやアイアンゴーレムなんかを想像するけど、実際にはどんなのが現れるのだろう? 硬い岩石や金属の塊ともなると鮫噛剣では歯が立たないかもしれない。いっそパワーを活かして投げ飛ばせれば自重で自滅してくれないかな? 

 先頭を歩いていたシドが手を上げて足を止めた。敵の気配を感じたときのサインだ。僕も耳を澄まして周囲の様子を探る。するとコンクリートの壁を伝って遠くの方から音が聞こえてきた。あれ? この音はどこかで聞いたことがあるぞ。と言ってもかなり昔のことだ。そう、それは前世の記憶。

「思い出した、工事現場の音だ!」

 転生する前の日本で聞いた重機の音にそっくりなのだ。クローラーが移動する際に発するガタガタというあの音である。

「来たぞ!」

 シドの声に通りの向こうに目をやると、地下七階の魔物がゆっくりと近づいてきていた。すかさず僕とリタが導爆発型反応シールドを構える。

「なんなのあれっ!?」

 全員が恐怖に身を竦めていたけど、僕だけは別だった。

「ロ、ロボじゃん!」

 現れた魔物は小さな装甲車の上に人間の上半身が乗ったような姿だ。三角形のクローラーが推進力となっている。腕の先端はマジックハンドのようになっていて、物体を掴むこともできるようだ。ゴーレムというよりは古いアニメのロボットみたいだった。

「ララベル、敵の駆動力を奪ってくれ。足元にグレネードを!」

「了解」

 通路の幅は六メートルほどで狭い。すり抜けることはできないし、引き返すのも面倒だ。敵の能力を知るためにもとりあえず戦ってみよう。

 ララベルのグレネードがタンクの足で爆発したけど、動きは止まらなかった。

「効いてねえ!?」

「シド、頼む!」

「おう」

 シドは狙いを定めてクローラーにボルトを叩き込む。一発、二発、三発、四発目で動きが止まった。

「みんなはここで待っていて。僕が戦ってみる!」

 接近してスキャンをしてみた。



 対象:タンクBK-01 全高二二八㎝ 全幅一四六㎝ ダメージ0% 

 タグラム合金でできたゴーレム。装甲が硬くパワーがある。アームが伸びて直接攻撃を仕掛けてくる。