ミレアはだいぶわがままである。とにもかくにも僕らは難敵相手に切り抜けた。



 ミレアに案内されたのは地下六階の奥地だった。何本もの倒木が折り重なり、その上には苔がむしているような場所だ。

「着いたわ」

「ここが地下七階の入り口?」

「ええ、こっちよ」

 ミレアは身をかがめて、倒れた木の下に潜り込んだ。階段が見つかりにくいのも無理はない。折れた木が積み重なって石造りの階段を完全に隠していたのだ。木の下には明かりも射さないから、普通なら見過ごしてしまう場所だ。

「ヴァンパイアは暗いところでもよく見えるのよ」

 天上の明かりも届かない暗がりでもミレアの足は淀みない。振り向いたミレアの瞳は赤く光っていた。

「うふふ……怖い?」

「そうでもないです」

 僕は持参した人工太陽照明灯を点けた。菜園でも使っている優れものだ。

「こっちに向けないで! 火傷するじゃない!」

 ミレアは目を細めながら飛びのく。

「大丈夫ですよ、当てませんから」

 人工太陽とはいえ、僕の作品は強力だ。ヴァンパイアの命も奪いかねない。

「かわいい顔をして本当に恐ろしい子……」

 ミレアが後ろに回ったので、僕が先頭に立って明るく照らされた階段を下りた。



       ◇



 地下七階はこれまでの迷宮とはがらりと雰囲気が変わっていた。床や壁は金属やコンクリートらしき素材になっている。天井には照明装置までついているぞ。無理に形容するれば、とってもメカメカしくなっている。たとえるなら悪の秘密結社の秘密基地? そんな感じだ。

 見たこともない風景にデザートホークスの面々もかなり怖がっている。でも僕は嬉しくて仕方がない。

「セラは何をはしゃいでいるの?」

 リタが不思議そうに訊いてくる。

「だってさ、解体すれば金属が取り放題なんだもん! 武器にして売ってもいいし、新しい道具を作る材料にもなるよ。天井には山ほど魔導ランプがついているしさ!」

「なんていうか……、セラは前向きよね」

 エルドラハの人間にとっては見慣れない風景でも、僕にしてみればそうでもない。だけど、珍しくミレアが真剣な顔で僕をたしなめた。

「でもね、ここの魔物は最悪よ」

 そういえばミレアは地下七階に来たことがあるんだったな。

「どんな魔物が出るの?」