ララベルは頑張ってくれていたけど、いかんせんアーミーアントの数が多かった。爆発をすり抜けてきたアントが僕らに向かって硬い顎を突き出してきた。僕とリタは魔導爆発型反応シールドで攻撃を防ぎ、反撃はミレアがする。さすがは伝説のソロプレーヤーなんて呼ばれるだけある。ミレアの動きは流麗で剣さばきは力強い。スキルで空まで飛べるので、その強さは計り知れない。

 だけど押し寄せるアーミーアントは時間とともに増えていく。じわじわと焦りがにじむ中、シドがはるか後方の敵にマテリアルクロスボウの狙いを定めた。

「シド?」

「敵の頭を討ち取る」

 シドが狙っているのは巨大な女王アリだ。軍隊の後ろに隠れるようにしているけど、頭だけははっきりとここからでも見える。でも、本当に倒せるのか? 距離は三〇〇メートル以上あるんだぞ。

「女王アリの外殻は硬いわよ」

 ミレアが教えてくれたけどシドに躊躇いはない。

「こいつはセラが作ってくれた武器だぜ。アリなんぞに負けるもんかよ……」

 シドの指がトリガーをしぼった。弦が力を開放すると同時に風魔法の補助が入る。矢は回転と推進力を高めて勢いよく飛び出した。狙いは過たず、ボルトは女王アリの眉間へと吸い込まれていく。インパクトの瞬間に矢じりの先端が爆発して女王アリの外殻に穴が開き、そのまま侵入したボルトが体内で再爆発して女王アリの頭は吹き飛んだ。

「まあ、こんなもんだ。フンッ」

 シドの白いひげが鼻息で揺れた。

「やるじゃねーか、シド!」

 ララベルがグレネードを投げながら喝采する。

「見て、敵の動きが乱れてきたわ」

 リタの言う通り、これまで整然と進んでいたアリの群がばらばらになりつつある。女王アリを失って指揮系統が乱れたのかもしれない。逃げる個体も出始めた。

「一気に蹴散らそう!」

 僕たちの攻撃にアーミーアントは徐々に数を減らし、ついには姿を消したのだった。

「手強い相手だったね」

 あれだけの数が相手なら僕だって囲まれたらひとたまりもなかったと思う。

 採取しておいたオレンジを『料理』して、オレンジジュースを作った。

「はい、のどが渇いたでしょう?」

「美味しい!」

 リタとララベルは素直だ。

「ビールの方がいいなあ……」

 シドはちょっとわがままだ。

「お姉さんはセラの血が飲みたいな?」