「呪いの辛さは知っているんです。僕もずっと重力の呪いというのにかかっていましたから。だから血の渇望がどうしても抑えられないときは僕のところに来てください」

「…………」

 ミレアは希少種でも観るような目で僕を見つめていた。

「なる……」

「はい?」

「私、セラの仲間になる! 私をデザートホークスに入れて!」

 ヴァンパイアになつかれた!? 

「いいの? 分け前とかも減っちゃうよ」

「いいの! お姉さんはセラさえいれば他にはなにもいらない!」

 そ、そうですか……。

「わかったよ。それじゃあ仲間に紹介するね。今から僕の家まで来てもらってもいいかな?」

「セラの家? いく、いくぅ!」

 こうしてやけに明るい闇の住人が僕らの仲間になった。



       ◇



 大きな荷車には食料品や毛布、その他探索に必要なものが満載されている。僕はそれを引っ張って迷宮を移動中だ。デザートホークスの地下七階への挑戦が始まった。

「セラってば本当に力持ち」

 ミレアが僕にもたれかかって歩きにくい。

「セラにくっつくなよ!」

「あら、ララベルってばやきもちを焼いているの? うらやましいんだったら左側にもたれなさい」

「ん? そうか!」

 ララベルは素直すぎる。ぴょこぴょことピンクのツインテールを揺らしながら左腕に絡みついてきた。

「二人とも離れてよ、歩きにくいんだから」

 荷車は軽々と引っ張れるけど、二人を引きずってしまいそうで怖い。リタとシドはその様子を引き気味の目で眺めている。

「ヴァンパイアを仲間にするなんて……。しかもセラにベタベタして、信じられないっ!」

「仕方ないだろう、七階の入り口を知っているんだから」

 リタは眉をひそめて二人に注意した。

「ここは迷宮なのよ。しっかりと周囲に気を配りなさい!」

「あら、リタもやきもち? 空いているのは背中だけだからおんぶでもしてもらったら?」

「バカじゃないの」

「無理しちゃって」

 ミレアはころころと笑った。

「いや、リタの言うとおりだよ。地下三階で油断はよくない」

「だな……」

 シドは頷きながら一見何もない空間を指さす。僕は鮫噛剣を伸ばして壁に擬態していたドクトカゲを突き刺した。緑色の体液が壁に滴り、ドクトカゲは動かなくなる。