「そ、そう? だったら……よかった……」

 リタはかなり純情な一面を持っているようだ。とはいえ十三歳の少年と付き合うとかはないだろうな。地球で言ったら女子高生か女子大生が男子中学生と付き合うようなもんだもんね。まったくあり得ないことじゃないだろうけど。



       ◇



 チームは順調に地下道を進んだ。途中で何体か魔物が襲ってきたけど、死者を出さずに撃退している。特にリタは強くて、戦士の名にふさわしい力強い技を連発してチームを守っていた。戦女神というものが本当に居るのならこんなふうなのだろうか、と思うほど美しかった。

 僕は戦闘ではいいところなしだったけど、他のことで役に立つことができた。暗闇の中で砂に埋もれかけた赤晶をたくさん見つけたのだ。赤晶というのは火炎属性の魔結晶で、純粋なエネルギー源として使われたり、攻撃的な魔道具に利用されたりもする。

「ウスノロにしてはよくやった。褒めてやるぜ」

 見つけた赤晶の量が多かったからピルモアでさえ上機嫌だった。昼ご飯の煮豆の量がいつもより少しだけ多かったくらいだ。でも、ちょっとばかり上手くいきすぎているような気もしていた。みんながソワソワと落ち着かない気分でいたと思う。

 魔物をうまくやっつけて、予想以上の魔結晶も手に入れた。ここで帰れば僕たちの探索は大成功だったはずだ。だけど、すべてが順調だったせいでピルモアたちに欲が出た。

「よし、このまま地下四階へ向かうぞ」

 ピルモアの決定に、ポーターたちの間に動揺が走った。迷宮は地下へ行くほど良質な魔結晶がたくさん採れる。だけど深部へ行けば行くほど、出現する魔物も強力になるのだ。僕はただのポーターだけど、七歳のときから迷宮で働いているからよくわかる。このチームで地下四階へ行くなんて、魔物の餌になりに行くようなものだ。

「無理だよ、ピルモア。人数が少なすぎる」

 思わず反対の声を上げてしまった僕をピルモアは無言で殴りつけてきた。容赦のない一撃に僕の小さな体は吹っ飛んでしまう。

「弱いやつはこれだから嫌になる。お前が役立たずのウスノロでも俺たちは違う。ちゃんと魔物を撃退できるんだ! ポーターのくせにつべこべ言うな」